ギリシャと債権団が2018年までの資金支援で合意した。本件は先ずギリシャの議会で採決が取られるが、恐らくはこのまま通過するのではないかと思う。債権団の課した条件は厳しいが、それでもこれがユーロ圏に残留しながらギリシャが得られる最大限の譲歩だからである。
ドイツ側はこれまでの条件に加えて、ギリシャの500億ユーロの国有資産を政府の手の及ばない信託銀行に預け、その後民営化をしてゆくことを要求し、ツィプラス首相はこれを受け入れたようである。
ドイツの厳しい要求については、ノーベル経済学賞のポール・クルーグマン教授がNew York Timesのコラム(原文英語)で「厳しさを通り越して悪意ある憎悪であり、国家主権の完全な破壊、そして絶望をギリシャに与えている」と痛烈に批判している。
ギリシャ経済の今後はと言えば、債務超過は改善されず、債務の期限が来るたびに今後も緊縮を押し付けられ、経済成長は今後何年も見込めないだろう。
以下の記事で詳しく書いたように、ギリシャが債務超過に陥っているのは通貨高のせいであり、それが是正されない限り、どれだけ資金支援を得ようとも、ギリシャの債務残高は溜まっていく一方である。
#ThisIsACoup
ギリシャ問題は3年後に棚上げ(解決ではない)された訳だが、一連の騒動におけるドイツのあまりの無慈悲さのために、Twitterでは#ThisIsACoup(これはクーデター)ハッシュタグが世界的に注目を集めているようである。ドイツがギリシャの主権を奪取しようとしているという意味である。
ハッシュタグのなかには経済学的な批判もあれば、大戦後のドイツの債務減免を風刺するものもあり、更にはナチスが再び欧州を支配しようとしていると揶揄するものまである。
批判の的となった素朴なドイツ
ここではギリシャの債務はドイツの責任であると最初から述べてきたが、批判の質はともかく、世界的にも経済学者の正論にようやく同意する流れになってきたのかもしれない。
ちなみに、世界中の批判に晒されているドイツ国民は今、何故こうなったのかを本気で考えているはずである。ドイツは借金を返して欲しかっただけであり、ユーロ圏への執着に関しては、統一された欧州は世界大戦を二度と起こさないために必要であるという、全くの善意でドイツが目指してきたものである。
しかしながら、ドイツ人の素朴な願いは歴史的に悉く上手く行かない。ユーロ圏は崩壊か、ユーロ圏共同債の発行のどちらかに必ず行き着く。しかし素朴なドイツ人は、望みを捨てることも、他国の債務を肩代わりすることも受け容れられず、このまま中途半端な道を行き続けるだろう。
それはいずれ必ず、ユーロ圏経済に何らかの歪みをもたらし、投資家にとっては投資のチャンスとなるだろう。それはギリシャ危機の再発かもしれないし、その他の事態かもしれないが、その時の市場の混乱に投資家が正しく対応するためには、ドイツの文化的性質を理解する必要がある。
下の記事は素朴なドイツ人が何故歴史的に政治的な成功を収められないかを説明したものなので、是非読んでおいてほしい。本当はドイツ人に一番理解してほしい部分なのである。彼らのためにも、ギリシャのためにも。