ギリシャの国民投票の開票作業がほぼ終わったようである。開票結果は、出口調査の通り債権団の要求に反対する内容となり、Yesが38%に対してNoが62%、反対派の圧勝となった。ツィプラス首相やバルファキス財務相はTwitterで勝利を宣言している。
予定通り、ギリシャはここから債権団との交渉に臨んでゆくことになる。バルファキス財務相は月曜日の合意も不可能ではないと述べていたが、国民投票の結果をドイツが受け入れるにはもう少しの時間が必要だろう。
国民投票は債権団の最終提案に対する是非を問うものであるため、ギリシャは債権団から譲歩を引き出せなければ合意ができない状況となった。最終提案の内容は以下の記事にある。
難しい立場に置かれたメルケル首相
国民投票前の記事にも書いたが、これで難しい立場に置かれるのはドイツのメルケル首相である。
ドイツはギリシャの離脱を望んでいない。ドイツはユーロ圏の維持を望んでいる。これはギリシャ以外の地域で報道されているように、勤勉なドイツがただ怠惰なギリシャに対し辛抱強いのではなく、ドイツの個人的な文化的理由による。以下の記事に書いた通りである。
したがって、個人的には、ドイツは最終的には合意をするのではないかと踏んでいるが、そのためにはメルケル首相のメンツを立てる何らかの外交的解決が必要である。
銀行の資金切れというタイムリミット
ギリシャにはまた、銀行の資金切れというタイムリミットがある。バルファキス財務相が合意を急いでいるのはそのためで、従ってギリシャはそれほどの譲歩を引き出せるわけではないのではないかと思う。
纏めれば、個人的な予想は、ギリシャは譲歩を引き出して債権団と合意するだろうが、その譲歩はそれほどは大きくないだろう、ということである。債務減免が得られるかどうかは五分五分だろう。緊縮財政の一部の撤回、債務減免なしというのが妥当な線ではないか。
デフォルトの場合はユーロ圏離脱へ
しかし、デフォルトの可能性は依然として存在している。一つは合意が間に合わず資金が切れる場合で、もう一つは債権団があらゆる譲歩に応じない場合であるが、どちらの可能性もそれほど高くないだろう。
万一デフォルトとなった場合には、ギリシャはユーロ圏を離脱することになる。デフォルトした国の債券は信用されず、資金調達が難しくなり、自国通貨を切り下げて輸出業と観光業の競争力を上げる以外、手段がなくなる。デフォルトしてユーロ圏残留というのは、法的には可能だが経済的には不可能である。
ユーロ圏離脱となった場合、ギリシャは景気後退か不況に陥るだろうが、通貨安によって経済は次第に立ち直るだろう。個人的にはこれが一番良いと思っているが、上記に書いたように可能性は低いと思われる。
為替はユーロリスク回避で円高へ
金融市場はどうなるだろうか? 先ず、為替相場は円高に動いている。ユーロの先行きが不透明となったことで、地理的に遠い日本の通貨が買われているということである。
この傾向は債権団との交渉の結果が判明するまで、数日続く可能性はあるが、ドル円は長期上昇トレンドであることはこれまで説明してきた。2017年の消費再増税が景気を更に押し下げ、政府は対策を強いられるからである。
詳細は上記の記事で分析したが、ドル円の適正レートは追加緩和がある場合で125、ない場合で130であり、したがって115-120のレンジでの買いは報われる可能性がある。これまで何度も書いた通りである。
ギリシャの問題がどうなろうとも、ファンダメンタルズでドル円に与える影響は皆無である。ギリシャのGDPはユーロ圏の1.7%であり、ユーロ圏に与える影響さえ極めて少ないと言える。
投資家のリスク回避行動が、長期上昇トレンドのドル円を短期的に押し下げてくれるのであれば、投資家としては安値で買うのみである。
日本株は円高とリスク回避で下落か
株式市場は国によって反応が違うだろうが、先ず日本市場はドル円が売られる地合いでは上値が抑えられるだろう。
日本株は割安なものが少なくなっており、日銀による緩和が続くという予想に基づいたとしても、消費増税によって消費が傷つけられているため、不動産株なども買いにくい。以下の記事を参考にしてほしい。
個別株などでは魅力のあるものもあるだろうが、日本株全体としては、相対的にはドル円の方が断然買いであり、わざわざ株のほうに行く必要もないだろう。
震源地の欧州株は大荒れか
また、欧州株は震源地であるため売られる可能性が高いが、上でも述べたように、ギリシャ以外の国へのファンダメンタルズでの影響はほとんどない。本来ならば押し目買いと行きたいところだが、ECBの量的緩和が2016年9月で終了する可能性があるため、深追いはせず、本当の安値のみを拾っていきたい。
欧州株は緩和終了懸念のため以前より調整に入っており、更に下がればかなり魅力的な安値となるものも多くある。欧州株は銘柄選択が重要となるだろう。
ベンツなどを販売するDaimler (XETRA:DAI、Google Finance)やイギリスの格安航空会社Easyjet (LON:EZJ、Google Finance)などは、仮に10%近く下がれば充分な買い場と言えるのではないか。
ユーロはそれほど動かずか?
最後に、ファンダメンタルズとしては一番影響のあるはずのユーロだが、日本時間月曜朝の時点であまり動いていない。ギリシャのユーロ圏離脱はユーロ高要因であるため、大きく下がれば買い向かうことはできるが、恐らくはそうならないだろう。
株式市場が過剰反応しているのは、結局ギリシャが原因ではなく、市場は下げる口実を探しているだけである。2015年の相場での一番の主題は、世界的な量的緩和がいつ終わるかということであり、ギリシャ問題は金融市場には些細な問題に過ぎない。
これまで市場参加者は、中央銀行が債券を買い、債券の利回りが下がるに従って、不動産や株式などのリスク資産を買ってきた。これをポートフォリオ・リバランスと言うが、中央銀行が量的緩和を止めるとき、生じるのはその資金の逆流である。
何度も引用してきた記事だが、重要なのはギリシャ問題ではなくこちらである。債券市場と株式市場はいずれ資金の奪い合いをすることになる。投資家は目先の下落や上昇に囚われず、より大きな暴落に備えておかなければならないだろう。