引き続きGoldman Sachsによるスタンレー・ドラッケンミラー氏のインタビューである。
ドラッケンミラー氏、アジアを語る
ここの読者はお気づきだろうが、優れた投資家の相場観は細部に違いはあれ大筋では皆同じ方向を向くことが多い。今のトレンドはインフレ、コモディティ高、そして中国を中心とするアジアである。
世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏に続き、ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年率いたドラッケンミラー氏の目もアジアに向いたようである。
ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
アメリカが自分の未来からどれほど借金をしているかということ、そしてアジアがコロナ禍にどう対処したかということを考えれば、コロナ後の勝者はアジア諸国ということになるだろう。
アメリカが莫大な量の国債を発行して現金給付を行なったということをドラッケンミラー氏は憂慮している。ドラッケンミラー氏は生粋の資本主義者であり、政府が借金をして価値のないゾンビ企業を延命していることに批判的である。
また、個別のセクターを見てもアジアは魅力的だと言う。
ITなど個別の業界を考えても、アジアはメモリやロボットなどの分野で先進国だ。今後5年はアメリカよりもアジアの見通しの方が良くなるだろう。アメリカはこれから低い生産性、高金利、安いドルなど借金漬けの対価を支払うことになる。
メモリやロボットというのは中国や韓国のことだろう。日本のことではない。インタビューでは日本、中国、韓国などのアジア諸国について聞かれていたが、ドラッケンミラー氏が名前を出したのは台湾、韓国、中国、シンガポールだった。日本にはエルピーダという優れたメモリメーカーがあったが融資を担当した日本政策投資銀行の愚策によって潰され、アメリカのMicronに買収された。そのMicronの株価がどうなっているかと言えば、次のようになっている。
日本政府には本当に先見の明がない。日本政策投資銀行に任せるよりは一般の銀行に任せた方がまだましだっただろう。ダリオ氏の言っている現代国家の共産主義化とはそういうことである。
当時、日本政策投資銀行は「メモリは韓国から買えば良い」と言い放ったらしい。メモリはNvidiaなどのグラフィックボードと共に今後のITの核となる技術である。日本政府にはそれが分からない。日本政府は何十年もの間、日本の優れた技術を潰しながら東京にゴミの山を建設し続けている。
中国への資金流入
さて、ソロス氏に並ぶグローバルマクロの投資家であるドラッケンミラー氏が気にするのは世界的な資金の流れである。
ドラッケンミラー氏やダリオ氏のような世界的なファンドマネージャーが中国を見ているということは、中国に資金が流入しているということである。これは当然ながら為替市場における西洋の通貨売り、中国元買いの流れに繋がる。ドラッケンミラー氏はこう述べている。
中国はこのコロナ禍を量的緩和なしで乗り切っている。Financial Timesでも報じられたが、中国はついにアメリカに代わって世界最大の投資先国となった。そしてこれはトレンドの終わりではなく始まりだろう。
アジアは株式市場においてアメリカをアウトパフォームすることになるだろうし、為替市場においては特にそうなるだろう。
日本の投資家がどれだけ注目しているかは分からないが、アジアの通貨はコロナ後上昇している。ドラッケンミラー氏が注目したアジアの国の通貨を見てみよう。先ずは米ドル台湾ドルのチャートである。ドル円と同じく下方向が米ドル安台湾ドル高となる。
次は韓国を見てみよう。以下はドルウォンのチャートである。
最後に人民元のチャートである。
コロナ後にドル円が緩やかなドル安となっていたのも、アジア通貨高というトレンドの中で見てみると納得できるものとなる。ドル円のチャートは以下である。
しかし日本円は中国、韓国、シンガポールほどの通貨高とはなっていない。紙幣を刷り過ぎたのだろう。
結論
しかしアジア通貨高トレンドも突き詰めれば米国のインフレによるドル安トレンドであり、コモディティやビットコインの上昇トレンドと同じものであるとも言える。
いずれにしてもここで1つ強調したいのは、著名ファンドマネージャーらの視点が通貨や債券、コモディティなど個人投資家が通常取引するものとは別の方向に行っているということだろう。
この機会に読者もポートフォリオの幅を広げることを検討してみてはいかがだろうか。適切な分散投資はリスクを軽減してくれるだろう。