ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年率いた著名ファンドマネージャー、スタンレー・ドラッケンミラー氏のGoldman Sachsによるインタビューの続きである。
ハイテク株はどうなるか
コロナでハイテク株はかなり上昇した。自宅に篭りながら買い物をしようとすればアマゾンなどでネットショッピングをすることになるからである。Amazon.comの株価チャートを見てみよう。
コロナ相場で一番最初に上がったのがハイテク株だったと言える。そしてドラッケンミラー氏はそのトレンドにいち早く乗って大儲けしたファンドマネージャーの代表格である。以下は去年9月の記事である。
そのドラッケンミラー氏がインタビューでハイテク株の今後について聞かれ、次のように答えている。
それは難しい問題だ。これから数年4、5%のインフレが来るとすれば、高成長株が他の株に比べて非常に不利になることは歴史的に考えて異論の余地はない。
インフレは現在ドラッケンミラー氏の第一のテーマである。政府の莫大な現金給付でアメリカでは物価上昇が始まっている。それでドラッケンミラー氏は国債を空売りし、コモディティを大量に買っているのである。
ハイテク株はバブルではない
一方で、上記のAmazon.comなどのハイテク株がコロナ後にかなり上昇していることについて、バブルであるとの見方を否定した。ドラッケンミラー氏は次のように話している。
今の状況と2000年のドットコムバブルを比べるのは馬鹿げている。
2000年には2つの問題があった。単に株価が割高だったというだけでなく、高成長は終わる宿命にあった。
多くの高成長株はインターネットそのものの創生に関わっていた。そしてある時点でインターネットは出来上がった。
ユニオン・パシフィック社(訳注:19世紀にアメリカ大陸に鉄道を建設した国策会社)に線路の枕木を売るだけの会社があったとして、鉄道建設が出来上がってしまったらどうなるか。
ドラッケンミラー氏は2000年のドットコムバブルは元々弾ける運命だったと言う。業界人なら分かるだろうが、ドラッケンミラー氏の口からこれを聞くのは少し皮肉である。何故ならば1988年から2000年までソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたドラッケンミラー氏が2000年に辞めたのは、まさにこのドットコムバブルでハイテク株から逃げ遅れたからである。
ドラッケンミラー氏とソロス氏のやりとりは以下の記事で紹介しているのでそちらも読んでもらいたい。
コロナとハイテク株
さて、2000年とは違い、今回ハイテク株にはまだ伸びしろがあるとドラッケンミラー氏は言う。コロナでデジタル化が急速に進んだトレンドはまだまだ続くと彼は見ている。ドラッケンミラー氏は次のように説明する。
企業と話をすると企業は皆デジタル化を急いでいる。デジタル化に乗り遅れると競争に負けてしまうからだ。
デジタル化への移行はまだ3、4イニング目だ。コロナのおかげで1イニング目から3、4イニング目までジャンプしたが、まだ9イニング目ではない。
しかしコロナ後にハイテク株が大分上がったことは確かである。しかしドラッケンミラー氏はハイテク株がいまだにバーゲンだと言う。彼は次のように説明している。
ここ2、3ヶ月の間、AmazonやMicrosoftなどのハイテク株は他の株よりアンダーパフォームしている。
Amazon、Microsoft、Googleなどの企業は割高にはなっていない。むしろ数ヶ月売られている。安売りだ。
確かに上記のAmazon株も2020年の後半からは横ばいとなっている。以下にMicrosoftの株価チャートを掲載するが、似たトレンドである。
彼は次のように続ける。
中央銀行が今後も緩和をすることを考えれば、ハイテク株にはそんなに心配してない。いくらか上がり続けるだろう。
一方で2020年よりトーンダウンしているようにも聞こえる。やはりドラッケンミラー氏の現在のメインシナリオはインフレだろう。
ビットコインが急騰しているのもインフレからの逃避先として見られているからである。著名ファンドマネージャーたちまでがビットコインに興味を持ち始めている。市場にどれだけ資金が余っているかである。
このトレンドはまだまだ続くだろう。インフレについてはここでは去年から報じている。ビットコインについても最近の急騰前から記事を書いている。投資家としてはトレンドには早く乗っておきたいところである。