世界最大のヘッジファンド: 2021年、株高は続かない

世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏がFuture Investment Initiativeにリモートで参加して2021年の相場観を述べているのでここで報じたい。

2021年の株式市場

2020年に株式市場は大暴落して大暴騰した。最終的には株式市場は好調で終わったと言えるが、2021年もこの勢いが続くかと聞かれてダリオ氏はこう答えている。

2021年の株式市場は2020年ほど活気のある相場にはならないだろう。

前回の記事で報じたことだが、世界でもっとも儲けたファンドマネージャーであるダリオ氏は、2020年ではコロナ相場で下落相場から逃げ遅れ、その後も上昇相場には乗らずに静観したために巨額の損失を計上した。

それでも株式市場に対するダリオ氏の慎重姿勢は変わっていないようである。

ダリオ氏は2021年の経済の展望についてもう少し詳しく述べている。

経済成長とインフレーションは上向きになる。同時に債務も積み上がるだろう。そうなれば政府は、特にアメリカでは国債を大量に発行しなければならなくなる。

需要と供給を考えれば世界に向けて大量の債券が供給されることになるが、一方でその債券を買い向かう需要は十分ではないだろう。

新型コロナウィルスは世界中でまったく収まってはいない。しかし2020年春のような全面的なロックダウンを行わないことで、コロナはもはや止まらなくなった変わりにGDPも2020年ほど酷いことにはならないと予想されている。

一方で懸念されているのが物価高騰である。コロナで大規模な景気後退となったのを量的緩和と現金給付で無理矢理補ったのだが、アメリカではその副作用が出始めている。

インフレーション、つまり物価上昇である。

ダリオ氏とともにFuture Investment Initiativeに登壇しているBlackRockのラリー・フィンク氏もインフレについて次のように語った。

おそらくこれから大規模な雇用創出がなされるだろう。そしてそれは非常にインフレ的な要素であると言える。

世界はかつてあったようなインフレの時代に戻りつつあると予想するのは妥当だろう。

その兆候は金融市場では既に始まっている。昨年から筆者が報じている通りである。

インフレとその結果

インフレとなれば金融市場に最初にもたらす結果は金利高騰、債券価格の下落である。しかし金利を無理矢理低位に抑えていることで株高が演出されているのだから、金利が上がればすべてが崩れてしまう。そこでダリオ氏は次のように予想している。

そうなれば2021年内に、このギャップを埋めるために中央銀行が介入して債券をもっと買わなければならなくなると考えるのが合理的だ。

だが金融緩和もインフレが落ち着いている間にだけ存分に使うことのできる手段である。インフレの状況下では緩和は物価高騰を悪化させてしまう。そうなれば中央銀行はいずれ緩和を強行してインフレを酷くするか、緩和をあきらめて経済成長と国債価格が暴落するかのどちらかを選ばなければならなくなるだろう。

そうした環境が必ずしも株式市場にとってプラスにならないのは歴史が証明している通りである。以下の記事ではダリオ氏が1970年代のアメリカのインフレの時代に株価がどうなったかを説明している。

1970年代にも株式市場はインフレが落ち着いている間は一度上昇し、その後インフレが制御不能だと人々が気付き始めると半値以下に下落した。

2020年は株式市場に慎重だったために損失を取り戻せなかったダリオ氏だが、2021年にその慎重姿勢は報われるだろうか。今後もダリオ氏の相場観は報じてゆくので、楽しみにしてもらいたい。