アメリカ経済、失業率はリーマンショックの高水準を維持

市場は盛り上がっているが、投資家としては着実に実体経済の様子を確認し続けたいものである。新型コロナウィルスの流行により世界中でロックダウンが行われた後に一番反応した経済指標は失業率である。アメリカなどでは大規模な店舗の閉鎖などが行われ、失業率が一時的に跳ね上がった。

この失業率はピークの頃に比べると戻りつつあるが、どの水準まで戻りつつあるのかを確認しておくことは無駄ではないだろう。アメリカの失業率はここ1年のチャートで見ると次のようになっている。

ピークは4月の14.7%だが、そこから最新8月の8.4%まで下落してはいる。しかし8.4%がどういう水準なのかを考えるためにはもう少し長いスパンでこのチャートを見てみなければならないだろう。

下がったとはいえリーマンショック後の失業率ピークとそれほど変わっていないのである。

日本の失業率

これがどういうことかは日本の失業率の推移と比べてみると分かりやすい。以下は日本の失業率の直近1年分の推移である。

日本ではアメリカやヨーロッパと違い強制力のあるロックダウンが行われていないため、コロナ発生時から徐々に失業率が上がっているのが分かる。これが新型コロナウィルスの経済への自然な影響なのであり、強制ロックダウンを行ったアメリカもいずれは日本と同じような動き(あるいは水準)に一致してくるはずである。

つまり、下がりつつあるアメリカの失業率は元の水準に戻ろうとしているのではなく、いずれコロナの影響を考慮した上での自然な水準に収斂してゆくはずである。その水準が何処かということが当面の問題となるが、仮にそれが5%だとしてもコロナ前の水準からすれば大幅上昇だということは考えておかなければならない。

あるいは、トランプ政権が現金を配る程度によっては失業率を無理矢理元の水準に戻すことはできるかもしれない。しかしその場合はドルが暴落するだろう。レイ・ダリオ氏が基軸通貨暴落について繰り返し語っているのはそれが理由である。

失業率が悪化するにしても、ドルが暴落するにしても、どちらも経済にとっては暗い未来だが、投資家として言えることはコロナの歪みは必ず何処かには非常に大きな形で出なければならないということである。株式も為替も債券も無事というシナリオは絶対に有り得ない。それだけは頭に置いておかなければならないだろう。