新型コロナウィルスの世界的流行で一時暴落した株式市場もその後爆発的な勢いで上昇している。証券口座の開設数が急増するなど個人投資家が買いに走っていることは間違いないが、一方でプロの動きはそれとは異なってはいる。
これまで機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fからジョージ・ソロス氏、スタンレー・ドラッケンミラー氏のポートフォリオを紹介してきたが、今回は世界最大のヘッジファンドBridgewaterを運用するレイ・ダリオ氏を取り上げたい。
ダリオ氏のポートフォリオ
ここまでのおさらいだが、コロナ相場における株高を受けてソロス氏は債券ETFや公益株ETFなど金利低下で上昇する株を買い増したことを報じておいた。
そしてソロス氏の弟子にあたるスタンレー・ドラッケンミラー氏は米国株を買い増したものの、Amazonなど底値で買っていたハイテク株に関しては一部利益確定していた。
ドラッケンミラー氏はそれでも確かに米国株の買い増しと言えるのだが、ソロス氏については実質的には株高ではなく金利低下に賭けていると言える。著名ヘッジファンドマネージャーらのコロナ相場に対する微妙な態度である。
では世界最大のヘッジファンドを運用するダリオ氏はどうだろうか? まずBridgewaterの米国株買いポジションの総額の推移を見てみよう。
- 2019年3月末: 163億ドル
- 2019年6月末: 128億ドル
- 2019年9月末: 114億ドル
- 2019年12月末: 98億ドル
- 2020年3月末: 50億ドル
- 2020年6月末: 60億ドル
コロナ相場は3月末に底を迎え、その後上昇している。底値だった3月末からポジション総額は増えてはいるが、株価上昇によるポジション金額の増加を考えれば買い増したわけではないと言うのが妥当だろう。そしてどちらにしても2019年3月の163億ドルには遠く及ばない規模のポジションしか持っていない。
個別銘柄
規模から見ればダリオ氏は積極的に米国株を買っているわけではなさそうである。ではポートフォリオの内容はどうだろうか。個別株のなかで顕著なポジションの変化があったものは以下の通りである。
- 金ETF: 6億ドル -> 9億ドル
- 中国株ETF: 0.2億ドル -> 2億ドル
- Alibaba Group: 0.5億ドル -> 2億ドル
- 超長期国債ETF: 3億ドル -> 0ドル
ゴールドと中国株の増加が目立つ。米国株ではない。ソロス氏と同様、増額分は実質的には米国株そのものではないシナリオに賭けられている。
面白いのはソロス氏が金利低下に賭けているのに対して、ダリオ氏はインフレに賭けているということである。ダリオ氏は超長期国債ETF(TLT)のポジションを閉じているが、金利低下に賭けるならばここは債券の買いを増やす局面である。そしてダリオ氏は金を買っている。
結論
コロナ相場において著名ファンドマネージャーの意見は微妙に異なっており、三者三様となっている。一番株式市場に強気なのはドラッケンミラー氏だが、それでも買いポジションは本気の買いの規模からは程遠い。
ソロス氏とダリオ氏は明らかに株式市場から一歩引いている。
ダリオ氏が様々なことを考えてこういうポジションになっているということは、これまでの記事を読めば分かることである。そちらも参考にしてもらいたい。