米国株が急落している。9月3日から連日下落しており、ほとんど調整らしい調整もないまま上昇してきた米国株がこれほど下落するのは2月のコロナショック以来あまり無かったことである。
米国株下落の原因
まずは米国の株価指数S&P 500のチャートを掲載しよう。
株価下落の原因は何だろうか。大手メディアではほとんど報道されていないだろうが、きっかけとなったのはAppleの株式分割である。Appleの株価チャートは次のようになっている。
これまで爆発的に上昇してきたAppleが急激に下がっていることが分かるだろう。高値から既に20%以上の下落となっている。
巨大企業とはいえ1企業に過ぎないAppleがなぜ重要なのかと言えば、500の企業で構成されるS&P 500の7%のウェイトをApple1社で占めているからであり、Appleが動くだけで指数全体が動いてしまうのである。
Appleの株式分割
このAppleは8月31日に1対4の株式分割をしており、既存株主にはこれまでの4倍の株数が与えられた代わりに株価が1/4となった。
実質的には何も変わらない措置だが、市場では400ドル(4万円程度)なければ投資できなかったApple株が100ドル(1万円程度)で買えるようになるということで、小口の投資家が更に流入するようになるという理屈でApple株は8月末に向けて上昇を続けていた。
しかし4万円が1万円になったことで流入する株主というのはどれぐらいだろうか。ウォーレン・バフェット氏のBerkshire Hathawayのように1株が3000万円以上する会社の株式分割ならともかく、このような些細なことでApple株に資金が流入するなどということはない。
株式の実質的な価値が変わらない株式分割で株価が上昇するなどというのは超小型のボロ株であればありうることだが、Appleのような超巨大企業でみみっちい仕手筋の仕掛ける相場のようなことが起こるというのが今の相場であり、コロナで実体経済が深刻なダメージを負っているにもかかわらずあらゆる口実で上昇してきた相場が最後に頼るような口実がこういうまったく実のないものだということである。そして口実が遂に尽きたから下がったのである。
ドラッケンミラー氏の慧眼
この状況を読んでいたのか、かつてジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたドラッケンミラー氏はコロナ相場の底値の頃からハイテク株を買ってきたが、少し前に利益確定している。
これまではコロナでもハイテク株だけは無事だという理屈でハイテク株は上がってきたが、コロナ不況という大きな経済全体の流れにハイテク株だけが除外されることは有り得ないということだけは言っておこう。(コロナ不況という言葉に同意する人がどれだけいるだろうか? その事実がバブルであることを示しているのである。)
更に言えば、株式市場にも為替市場にも債券市場にも何処にも大きな影響が出ないままコロナショックが終わることも絶対に有り得ない。そしてまだ何も起こっていないということは、これから起こるということなのである。それを楽しみに待っておこう。