今回も機関投資家の米国株買いポジションを開示するForm 13Fを取り上げる。前回のジョージ・ソロス氏に続き、かつてソロス氏のクォンタム・ファンドを率いたスタンレー・ドラッケンミラー氏のDuquesne Family Officeを取り上げたい。
ドラッケンミラー氏も米国株買い増し
まず前回のソロス氏だが、コロナ相場の底値にあたる3月にポジションを最小化していたソロス氏が今回の開示の6月末のポートフォリオでは米国株を買い増していたことを報じた。
しかし実際には買い増し分は社債ETFなどに充てられており、中身を見れば株価上昇よりも金利低下に賭けたポジションであることを上の記事では説明している。
一方でドラッケンミラー氏のポジションは3月末の25億ドルから33億ドルに増えており、こちらは純粋に米国株を買い増した分の増額となっている。
前回も伝えたように株式市場は3月末には底値にあり、底値では買わなかったドラッケンミラー氏が株価が上昇してから株を買い増した形となり、ヘッジファンド業界でもタイミングの名手であるソロス氏、ドラッケンミラー氏らしからぬトレードとなっている。米国株はここまで次のように推移している。
ドラッケンミラー氏の銘柄選択
ソロス氏のポートフォリオもそうだったが、ドラッケンミラー氏の場合も個別銘柄を見てゆくとなかなか興味深い。
まず3月末にドラッケンミラー氏はポートフォリオの総額は減らしながらも、Amazon.comやNetflixなどコロナでも好調となりそうな銘柄をピンポイントで買ってゆくという見事な銘柄選択を見せていたことを報じている。
しかしその3月末の主力銘柄は今回の6月末の開示では両方とも減額されている。
Amazon.comは3.5億ドルから2.4億ドルに減額されている。
Netflixは3.2億ドルから1.4億ドルへの減額である。
両銘柄とも7月以降も上昇しているため、利益確定は少し早かったというところだろうか。しかし代わりにMicrosoftが1.7億ドルから3.7億ドルに増額されており、機会損失を補っている。
しかしFacebookやAlphabet(Googleの親会社)も減額されるなど、ドラッケンミラー氏はハイテク株は総じて利益確定している様子である。一方で増えているのがまず銀行株であり、JP Morgan Chaseは新規ポジションで1.5億ドルとなっている。
コロナの影響で倒産が増えれば真っ先にダメージを受けるのはお金を貸している銀行であり、米国株が総じて強気相場となる中で無視され続けてきた銀行株だが、ドラッケンミラー氏はNasdaq一辺倒の相場から忘れられている銘柄に資金が移ってくると読んでいるのかもしれない。
他に面白いのはバイオ株ETF(XBI)で、1.2億ドルとなっている。
こちらはコロナで恩恵を受ける側のセクターだが、Nasdaqのハイテク株ほどは上がっておらず、ドラッケンミラー氏は資金が循環してくることを予想していると考えられる。
Nasdaqはここまで他の業種を寄せ付けない勢いで上がってきたが、その状況は変わるだろうか。少なくともドラッケンミラー氏は変わると考えているようである。