米国の5月小売売上高は4月から回復 GDPはどうなるか

様々な経済指標の中でもコロナ後に特に重要となっているアメリカの実質小売売上高が発表された。コロナ前の2月の水準と比べて-6.7%のマイナス成長となり、4月の-20.8%、3月の-7.8%と比べて改善しているが、コロナ前の水準まではかなり遠い水準であると言える。

実体経済はどこまで回復するか

実質小売売上高のチャートは次のようになっている。分かりやすいように2月の水準を100%として各月の数字を算出している。

より重要なのはGDPの構成要素でもある実質個人消費の5月の数字がどうなるかだが、個人消費は月末まで発表されないので、先に発表される小売売上高が注目されている。

しかしコロナ後の個人消費は小売売上高とほぼ同じような下げ幅となっている。以下は同じように2月を100%とした実質個人消費のチャートである。

2月に比べて3月が-6.6%、4月が-20.0%と小売売上高と似た推移となっているので、5月は恐らく6%程度となるはずである。

今年と来年のGDP

ロックダウンの一番厳しかった4月が底となり、3月と5月はそれよりも良い数字になるという事前の予想に大まかに沿った結果となっている。ここまで考えると一番重要なのはロックダウンがほぼ解除された6月の数字がどこまで回復するかということになるが、それはまだ発表されていないため、現状扱える数字を扱って今後の推移を予想してゆくほかない。

実質個人消費の下落に対して実質GDPがどう推移するかだが、リーマンショックの頃を参考にすれば個人消費の2%程度の下落に対してGDPは3%程度落ちている。6月以降の個人消費が2月比の3%減で仮に推移するとしても2020年全体では-4%程度のマイナス成長となり、GDPはやはり-6%程度、つまりリーマンショックの2倍のダメージということになる。5月初旬に情報がない状態で立てた予想はある程度は正しそうである。

あとは株式市場がどう推移するかが実体経済にとっても大きな要素となるだろう。

金融緩和によって薬漬けにされた実体経済と株式市場はある程度一蓮托生であり、その状況が世界経済にとって良いのか悪いのかは、2021年にははっきりするだろう。

レイ・ダリオ氏のコメントを再び掲載したいが、こんな常識的なことも誰も理解できなくなるのがバブルの恐ろしさであり、おかしさなのである。人類は面白い生き物である。

われわれが消費をできるかどうかはわれわれが生産できるかどうかに掛かっているのであり、政府から送られてくる紙幣の量に掛かっているではない。

紙幣は食べられない。