銀行株暴騰はバブル相場の終わりの始まり

最近はレイ・ダリオ氏の興味深いブログ投稿に時間をかけていたが、相場の方も面白い動きになっているので一度振り返ってみよう。

新型コロナ相場

新型コロナウィルスで世界中の都市がロックダウンしたことにより株式市場は2月から3月にかけて暴落、しかしその後反発し行き過ぎとも言うべき上昇相場となっている。

これが行き過ぎかどうかだが、市場全体だけを見ていても分からないことがその中身を見ることによって明らかになってくる。

市場全体は一貫して上がっているように見えるが、指数とは個別銘柄に支えられた数字であり、様々な銘柄が代わる代わるそれを支えているのである。

最初に上がった消費財メーカー

3月末からの上昇を最初に支えたのはP&GやJohnson & Johnsonなど売上が比較的コロナに左右されにくいと思われる銘柄である。以下はP&Gのチャートである。

以下はJohnson & Johnsonのチャートである。

市場はまず「他の銘柄は下がっても仕方がないが、コロナでも洗剤などは買われ続けるのではないか」と考えたわけである。妥当な考えだろう。それでP&GもJohnson & Johnsonも4月の半ばにはコロナ前の高値付近まで戻ってしまった。

チャートを見て分かる通り、その後は振るっていない。つまりそこから先、指数を支えたのは別の銘柄ということになる。

次に上がったハイテク株

これらの銘柄に代わって指数を支えたのはハイテク株である。市場は「コロナで外に出られなくともネットはできるのではないか」と考えたのである。妥当な考えだろう。丁度、P&Gなどが天井に差し掛かったあたりで暴騰したのがAmazon.comである。

何度か買い銘柄として早い内に紹介していたGoogleの親会社Alphabetもその後の上昇を助けている。

Appleもハイテク関連として上昇しているが、iPhoneなどのハードウェアはコロナで4月に購入が減った他の製品と同じではないのだろうか? この当たりから市場の理屈が怪しくなってくる。

ハイテク株の次

さて、ここ数日これらハイテク株の上昇が頭打ちとなっている。ハイテク株が指数を支える段階も終了したようである。したがって市場が上がり続けるためには次の支え手を探さなければならない。

しかしコロナで消費が減りにくい銘柄もコロナで消費が一時的に増えた銘柄も既に上がってしまった。それで市場が引っ張り出してきたのが銀行株である。例えばGoldman Sachsのチャートが以下である。

Morgan Stanleyのチャートが以下である。

「他の株が上がったのに銀行株だけ上がっていないのはおかしい」ということで、もう何でもありである。

投資銀行といえども、新型コロナで銀行がダメージを負わないということは、誰もダメージを負わないということである。不良債権など存在せず、誰も資金繰りに困っておらず、万事うまく行く、銀行株が上がる相場とはそういうシナリオを想定する相場なのである。

支え手を使い果たした後の相場

しかしそうはならない。そして市場にとっての問題は、これまで順番に上昇を支えてきた個別銘柄がネタ切れになりつつあるということである。P&Gの上昇は妥当だっただろう。Amazon.comが上がるのも理解できる。Appleは怪しい。そして、銀行株はアウトである。銀行業の怪しさについてはポンド空売りの記事でも触れておいた。

それでも銀行株が上がらなければならない相場というのは、つまり上昇を支える支え手が見つからなくなりつつある相場ということである。バブル相場は市場全体を見れば単に上がって下がる相場だが、個別株をよく眺めてみると常にこのように順番に上昇を繰り返しながら支え手は使い果たされてゆく。

丁度市場が支え手の枯渇に苦しみ始めた辺りでコロナの第2波などが来てぎりぎり支えてきたものが決壊することになる。しかしニュースとして何がトリガーになるかは大した問題ではないのである。