新型コロナウィルスの世界的流行で株式市場は一旦暴落したものの、その後反発して推移している。投資家にとっての問題はその後の動向だが、金融市場全体を見渡してみるとやや危なげな動きが見え始めている。
小型株指数が失速
こういう場面で参考になるのはやはり米国の小型株指数Russell 2000である。
株式市場全体が崩れる前には主要指数の銘柄よりも指数に含まれていない小型の銘柄から下落を開始することが多く、2018年の世界同時株安ではRussell 2000が崩れたことが25%に及ぶ株価急落の始まりだった。
当時、米国の主要株価指数S&P 500は以下のように推移していた。
崩れかけているが崩れていない。一方で、Russell 2000はこうなっていた。
完全に崩れ始めている。
2018年10月においてはここが完全な天井だった。株価はその後25%下落することになる。
では現状はどうなっているか。以下はS&P 500のチャートである。
以下はRussell 2000である。
まだ崩れてはいないが、段々怪しい動きになってきた。
失速するポンド
小型株が先に崩れるかどうかというのは、要するに市場全体に資金が行き渡っているのかいないのかということである。その意味では現在の市場で注目すべきなのはイギリスの通貨ポンドだろう。通常はポンドドルのチャートを掲載するところだが、筆者がポンド円を空売りしているため今回はポンド円のチャートを掲載する。
静かに下落を再開している。
何故ポンドが市場全体の資金の量と関係あるかと言えば、イギリス経済が銀行業に依存しており、しかもイギリスは対外純負債が大きい(つまり外国に対して借金している)からである。この組み合わせは新型コロナの影響が深刻になればなるほどイギリス経済の首を絞めてゆく。
つまり、ポンド相場は世界市場で新型コロナの影響が深刻かどうかの試金石になる。そのポンドが下落している。詳しくは以下の記事で解説しているのでそちらを参考にしてほしい。
結論
株価の今後の見通しについては一旦下落に向かうと予想している。
量的緩和とヘリコプターマネーなどの経済対策が新型コロナによるダメージを十分補えるかどうかが問題となるが、筆者はこれが十分ではないと見ている。アトランタ連銀のGDP予想では第2四半期のGDP成長率が年率-34.9%のマイナス成長と出ており、第1四半期の-4.8%と合わせると、仮に今年の後半に前年度の水準まで急回復したとしても年間のGDPが10%程度のマイナスとなる計算である。
トランプ政権の経済対策は今のところGDP比4%程度である。ドラッケンミラー氏も同じ見方のようである。
今後の動きとしては、ダメージの大きさに対して経済対策が少ないということを市場は次第に織り込み始めるだろう。そして下落が経済対策を催促する催促相場となる。その後のことは政府がどう対応するかである。
この規模の経済活動の下落を紙幣印刷と現金給付で無理矢理補おうとすれば、ダリオ氏の言うドルの紙くず化シナリオになる確率が高い。
一方で経済対策の規模がコロナによるダメージを下回り続けるならば、1929年の世界恐慌のような長期の下落相場となるだろう。しかし株式市場はどちらの場合も一旦は催促のために下落しなければならないということである。