ドラッケンミラー氏: 量的緩和はコロナから株式市場を救えない、株のリスク・リワード比は過去最悪

ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年率いた著名投資家スタンレー・ドラッケンミラー氏がニューヨーク経済クラブのWebcastでコロナ相場に関する意見を表明している。

株価は割高か

新型コロナウィルスの世界的流行で株価は2月から3月にかけて暴落したが、その後力強く反発している。米国株のチャートは次のようになっている。

3月末以降の上昇相場についてドラッケンミラーはシンプルな相場観を表明している。

株式のリスクとリワードの比率は恐らくわたしのキャリアで見た中で最悪だ。

ドラッケンミラー氏のキャリアは長い。クォンタム・ファンドに移る直前には1987年のブラックマンデーを経験し、その後2001年のドットコムバブル崩壊までクォンタム・ファンドを率いている。勿論彼のキャリアには2008年のリーマンショックも含まれている。その彼の長いキャリアの中で株式相場は今が一番割高になっていると彼は言っている。

わたしの分析が間違っていることを願ってはいるが、端的に言ってV字回復は幻想だ。

薬があるからという理由で人々がウィルスに対する行動を変えるとは思えない。

量的緩和と経済対策は市場を救うか

確かに新型コロナの影響は甚大である。しかしトランプ政権は数兆ドルの経済支援を表明し、Fed(連邦準備制度)は無制限の量的緩和を行なっている。それは株価を支えられないのだろうか? ドラッケンミラー氏は次のように続ける。

市場のコンセンサスは「心配ない、Fedが助けてくれる」というものらしい。この考えには一つだけ問題がある。わたしの計算によればそれは事実ではないということだ。

彼の発言はいつも清々しいほどシンプルである。また、理由については以下のように続けている。

トレーダーたちは市場には膨大な流動性が流れ込んでおり、経済刺激プログラムはアメリカの直面している問題を解決できるほど大規模だと思っているようだが、新型コロナウィルスによる影響は長引きそうであり、その間にたくさんの企業が倒産するだろう。

1人当たり1,200ドルのヘリコプターマネーなどを含むトランプ政権の経済支援についても同じように切り捨てている。

これは基本的に2つのものの組み合わせだ。労働者に仕事に行かないようにさせるための現金給付、そしてゾンビ企業を生きながらえさせるための大量の資金だ。

著名投資家の間で金融緩和とヘリコプターマネーの評判は極めて悪い。レイ・ダリオ氏やジェフリー・ガンドラック氏、クォンタム・ファンドにおけるドラッケンミラー氏の先輩にあたるジム・ロジャーズ氏なども同じ意見を表明している。

中でもドラッケンミラー氏は昔から量的緩和に批判的である。今回の経済対策が株価を救うかどうかは注入された資金が企業利益の押し上げに繋がるかどうかにかかっている。しかしドラッケンミラー氏の意見では、トランプ政権による大量の資金は利益を生まないゾンビ企業に吸い込まれてゆく。それでこれまでと同じように、注入された資金の量の割には実体経済が成長しない世界が持続してゆくのである。ドラッケンミラー氏の金融緩和への批判は以下の記事で詳しく説明している。

新型コロナウィルスによってその状況が極まったと言うべきなのだろう。経済は助からない。紙幣を刷っても失われた経済活動は返ってこないからである。