新型コロナウィルスの世界的流行が始まってから初めての米国のGDP速報値が発表された。投資家にとっては待ちに待った統計だが、2020年1-3月期の実質GDP成長率は前期比年率で-4.8%のマイナス成長となった。普段は季節調整の誤りを避けるために前年同期比のデータを伝えているが、前年同期比は急激な減速が数字に出るまで時間がかかるため、今回は前期比年率を採用する。
新型コロナで経済減速
グラフで見ると実質GDP成長率の推移は次のようになっている。
この-4.8%というデータをどう見るかだが、ここの記事をこれまで読んできた読者ならばこの数字がかなり深刻であると判断できるだけのデータを既に読んでいるはずである。
何故ならば、そもそもアメリカで新型ウィルスが流行しロックダウンが始まったのがいつからだったかを思い出してもらいたい。
アメリカでの新型ウィルス流行
中国で新型ウィルスが騒がれ始めたのが1月上旬、そこからイタリアで大流行が始まったのが2月下旬であり、アメリカで流行が開始したのが3月上旬、そしてロックダウンが始まったのはほとんどの州で3月の下旬なのである。以下の記事に書いた当時のデータを再引用してみよう。
- 3月13日: 2,163人 (+565 +35%)
- 3月14日: 2,825人 (+662 +31%)
- 3月15日: 3,497人 (+672 +24%)
- 3月16日: 4,372人 (+875 +25%)
- 3月17日: 5,656人 (+1,284 +29%)
- 3月18日: 8,074人 (+2,418 +43%)
- 3月19日: 12,018人 (+3,944 +49% カリフォルニア州で不必要な外出禁止)
- 3月20日: 17,438人 (+5,420 +45%)
- 3月21日: 23,709人 (+6,271 +36% イリノイ州、ニュージャージー州で不必要な外出禁止)
- 3月22日: 33,546人 (+9,837 +41% ニューヨーク州で不必要な外出禁止、必需品以外の店舗閉鎖)
この記事はアメリカでロックダウンが行われ始めた頃に書いたものである。
このようにアメリカでロックダウンが行われ始めたのは3月下旬からであり、本来ならば1-3月期のGDPには影響がほとんど出ていなくともおかしくないのだが、それでも-4.8%のマイナス成長となった。4月はほぼ完全にロックダウンの期間内であり、5月に入ってもロックダウン解除は段階的にしか行われないだろう。
半月ほどのロックダウンがGDPを-4.8%のマイナス成長に追い込むならば、4-6月期のGDPの落ち込みはどれほどになるだろうか。Reutersなどは最大年率40%のマイナス成長というエコノミスト試算を報じていたが、そこまで行かないにしても-10%から-15%は現実的な数字ではないだろうか。グラフをもう一度掲載するが、そうなるとリーマンショック当時の景気後退を大幅に上回ることは避けられないだろう。
仮に6-12月に去年の水準まで急回復したとしても(そんなことは有り得ないが)、2020年のGDPは-5%程度のマイナス成長ということになる。実際には-8%程度になるのではないだろうか。リーマンショック後の2009年でも年間の経済成長率は-2.5%なので、景気後退の規模はベストケースでリーマンショックの2倍程度、悪ければ当時の3倍か4倍ということになる。
株式市場の動向
さて、何もなかったかのように反発している株式市場はどうなるだろうか。
決算は1-3月期についてはそれほどは悪くないが、4-6月期の利益警告を出す企業が増えている。GDPも含め本当に悪い数字が出てくるのは夏頃なのである。
現在の株価上昇はおそらく第2四半期の数字さえ織り込んでいない上に、第3四半期以降の数字が去年の水準に急回復することを前提としている。しかしそれが起こらないことは以下の記事を読んだ読者にはお分かりだろう。
アメリカ経済と金融市場の動向は今後も報じてゆく。