原油価格の推移予想: 欧米のロックダウン解除で需要は急回復へ

新型コロナウィルスの世界的流行で原油価格が下落しているが、一方でアメリカやヨーロッパでは流行がピークを迎えつつあり、都市のロックダウンの解除が議論されている。この記事ではロックダウン解除による原油価格への影響を議論する。

原油相場の現状

原油価格は新型ウィルスの流行により年始の60ドル台から20ドル前後まで3分の1以下に下落した。世界的に国境が閉鎖されたため飛行機が飛ばなくなり、都市封鎖の影響で自動車や鉄道も走れなくなっているからである。

米国エネルギー省によれば世界的な燃料の消費は既に1日当たり1,000万バレル(全需要のおよそ10%)減少しており、筆者の試算ではこの数字は今後2,000万バレルから3,000万バレルに及ぶと考えられる。

この状況を受けサウジアラビアやロシアを中心とするOPEC+グループは970万バレルの減産を決定しており、この他にアメリカやカナダなどの生産減を含めると1,500万バレルから2,000万バレル程度の供給減になるだろうと想定される。

ここまで考えると原油相場は供給過多になり価格の下落が続くということになる。それで現在原油価格は下がっているのである。

ロックダウンと供給回復

しかし一方でアメリカやヨーロッパでは新型コロナウィルス流行のピークが訪れようとしている。ヨーロッパにおける流行の震源地となったイタリアでは4月の始めに流行ピークが到来した。

そしてアメリカでもピークが近づいている。また、オーストリアやチェコなどヨーロッパの一部の国ではロックダウンの撤回が行われ始めている。

これが原油相場にどういう影響を及ぼすかである。そのためには、供給の減少が主にどういう場所で起こっているのか、その内訳を考える必要がある。

燃料消費の内訳

米国エネルギー省による2018年のアメリカ国内のデータによると、液化燃料の消費の内訳は次のようになっている。

  • ガソリン: 45%(自動車等)
  • ディーゼル等: 20%(トラック、バス、船舶、電車等)
  • 液化ガス: 15%(プロパン等)
  • ジェット燃料: 8%(飛行機等)

ロックダウンの解除は徐々に行われるが、まず最初に需要が戻るのは自動車用のガソリンだろう。そしてその次に需要が戻ると思われるのがバスや電車など公共交通機関であり、最後が航空機だが、航空機については国境を開けてしまうと他国から新型ウィルスの流行を再輸入してしまう可能性があるため、先ず国内線が復活してから最後に国際線となるだろう。実際、中国ではロシアからの流入が懸念されている。

この回復の順序は例えば航空株にとって、国内線に専念する企業は国際線を主に運行している企業よりも回復が早いと予想されることを意味する。例えば少し前に高値の3分の1ならば買えると述べたアメリカの格安航空会社JetBlueだが、こうした会社は国際線も扱うAmerican Airlinesなどよりも早期の株価回復が予想されるだろう。以下はJetBlueのチャートである。

以下はAmerican Airlinesのチャートである。

株価の推移を見る限り、こうしたことを市場はまだまだ織り込んでいないようである。

原油相場の動向予測

さて、こうしたことは原油相場にも有利に働く。自動車だけでエネルギー需要の40%、電車などの公共交通機関を合わせれば65%がロックダウン解除で急回復することになる。ガス需要は原油とは別であるため、減少した原油需要の7割か8割は比較的早く戻るだろう。それよりも再開が遅くなると思われる航空機についてはエネルギー需要の8%であり、これが少ないことは原油相場にとって大きなプラスである。

ここまで考えれば絶望的に見える原油相場の様子も様相が変わってくるのではないか。もう一度チャートを掲載しよう。

この状態の原油を投げ売りするのも買いに走るのも投資家の自由である。しかし3月後半の株式市場を買いに走る投資家は少なかった。市場とはそういうものである。