アメリカから中国に覇権が移るレイ・ダリオ氏の話など最近はスケールの大きい話題が多かったので、今回は短期的なドル円の現状確認である。
ドル相場の奇妙な動き
新型コロナウィルス肺炎でドル円、というかドル相場は奇妙な動きを見せている。ドル円のチャートは次のようになっている。
以下はユーロドル(ドル円とは逆で下方向がドル高ユーロ安)であり、同じように奇妙なチャートとなっている。
これは以前説明した通り、アメリカの量的緩和と利下げというドルの下げ圧力とドル建て債務の返済ラッシュによる上げ圧力が互いに争っているからである。ドル建て債務の返済ラッシュによるドル高については以下の記事で説明している。
ドル円についてはこの両方の圧力がいまも続いているため、長期的には手出しをしない方針を継続している。しかし短期的に見れば注目しておくべきチャートがある。それはアメリカの実質金利のチャートである。
アメリカの実質金利とドル円
為替相場を短中期的に支配しているのは金利であり、ある通貨の金利が高くなると高金利を求めて資金が流入し、その通貨は上がる。逆に利下げなど金融緩和を行うとその通貨に投資するインセンティブが薄れ、通貨は下落することになる。
この観点で考えると、日本の長期金利はほとんど動かないようなものなので、ドル円はアメリカの実質金利に左右されることになる。金利が高くなればドル円は上がり、金利が低くなればドル円は下がる。アメリカの実質金利のチャートとドル円のチャートを並べると次のようになる。
上がれば上がり、下がれば下がる相関関係になっているが、相場が荒れ始めるとドル円がやや遅れて実質金利についていく形になっている。そして今ドル円は108円程度だが、実質金利の位置を考えれば103円程度まで下がっても良いということになる。
結論
こうした短期的な市場の歪みも捉えながら長期的な相場観を考えてゆきたい。新型コロナウィルスというダウンサイドと量的緩和やヘリコプターマネーという未曾有の金融緩和が組み合わされるとき、市場と経済には何が起こるのだろうか? 世界最大のヘッジファンドを運用するレイ・ダリオ氏は1929年の大恐慌の再来だと言っている。こうした主題についても引き続き考えてゆく。