新型コロナウィルスの世界的流行で株式市場は一度暴落し、その後反発して下落幅の半値を戻した。その下落相場の空売りで儲けたジェフリー・ガンドラック氏が株価の反発を利用して空売りを再開したらしい。
ガンドラック氏の空売り再開
ガンドラック氏は木曜日のツイートで次のように発言している。
株の空売りをダウが19,000ドル以下の時に手仕舞ったことを喜んでいる。ここ数日でいくらか空売りを再開できたことも同様に嬉しい。中央銀行の方針が誰でも救済するということであれば、実際には誰も救済されない。考えてみてほしい。
ガンドラック氏は新型コロナ相場の空売りをしており、3月後半に手仕舞っていた。ガンドラック氏は3月18日に以下のツイートをしている。
最後の3つの空売りを今日の午後2時37分に手仕舞った。利益があまりに大きかったので収穫せずにはいられなかった。市場のパニックは明らかだ。
ダウ平均のチャートは次のようになっている。
ガンドラック氏の手仕舞いは底値のたった2営業日前であり、タイミングとしてはほぼ完璧と言って良いだろう。
そしてその空売りをここ数日の反発を利用して一部再開したという。中央銀行の救済に関するコメントと株価動向の関係は定かではないが、彼が新型コロナでの政府の救済措置に批判的なのは報じてある通りである。
そして株価についても少し前から4月中の下落を予想していた。それでも株価は上がり続けたので実際に空売りを再開したということだろう。
株安予想の理由
さて、ではガンドラック氏は何故株価がもう一度下落することを予想しているのだろうか。彼はその理由について次のように説明している。
「株価が3月の底値をもう一度試す」というのはあまりに市場参加者のコンセンサス過ぎたので、代わりに株価が高騰したのも無理はない。それは「中央銀行のおかげでもう下落はない」というストーリーに支えられているが、その理屈は通らない。よって3月の底値を試すというシナリオもそのままメインシナリオとして残る。
つまり、市場参加者の共通見解があまりに悲観的だったので市場は上昇したということである。株価は市場参加者が悲観的な時に上昇する。何故ならば悲観的な人は既に株を売っているので、悲観的な人が大半を占めている状況とは売り手がもういない状況のことだからである。
しかし2文目の株価上昇は中央銀行のおかげだというくだりはどうだろうか。そもそも株価は2月からの強烈な下落相場の間、中央銀行の怒涛の緩和に一切反応せず下落を続けた。
下落相場の最中、ここではその理由は株価は金融政策に反応しているのではなく、新型ウィルスの状況悪化に反応していたからだと何度も説明してきた。そして感染者数の統計がアメリカで改善し始めた3月26日の記事で株について買い転換している。
市場が何に反応しているのかに注意することが大事だと言い続けてきた。感染状況悪化に反応してきた相場は感染状況改善で上昇する。それが根拠である。市場はガンドラック氏の言うように金融緩和に反応しているのではない。そうであれば3月始めに既に株高が始まっていたはずだからである。
多くの投資家は新型ウィルスによって売上が立たなくなった借金漬けの企業の倒産ラッシュが始まることを心配している。わたしも心配している。既に原油暴落の影響で米国シェール企業の倒産は始まっており、ホテル業界などで倒産が続くだろう。
しかしそれが連鎖的なバブル崩壊となるかどうかは話が全く別である。わたしの予想ではそれは2008年のような連鎖的倒産にはならない。債務バブルは少なくとも新型コロナでは弾けない。
何故か? その理由についてはジョージ・ソロス氏の再帰理論を使って以下の記事で説明しておいた。
さて、ガンドラック氏の根拠とわたしの根拠、どちらが正しいだろうか。読者にも考えてもらいたい。