新型コロナウィルス肺炎の世界的流行で様々な資産クラスが急落したが、そのウィルスの流行にもピークが見え始めている。
買い始める時期だというのは書いた通りだが、今回の記事では具体的な銘柄について書いてゆきたい。
原油
まずは原油だろう。
原油相場については詳しく書いたのでそちらの記事を参考にしてほしいが、20ドルという原油価格はかなりの安値である。
銘柄としては何よりシカゴの原油先物だが、米国株の原油ETF(NYSEARCA:USO)という選択肢もある。日本株のETFでも構わないが、どちらの場合も円建てで生活する日本の投資家がドル建て価格に賭けたい場合は同額のドル円を売って円高リスクをヘッジする必要がある。
また、新型ウィルスの流行がピークを迎えても原油の需要は少しずつの回復となると思われるため、株式ほどの急反発は見込めない可能性がある。そうしたリスクを考える投資家にはプット・オプションの売り(決めた価格以下に下がらなければ利益の出るトレード)を行うことも出来る。いわば価格下落の際に保険料を支払う保険の売りのようなもので、ボラティリティの高い今の相場では行使価格をかなり下げても保険料が十分に出る。現物の買いとどちらが良いかは相場観によるだろう。
産油企業
原油が安いということであれば産油企業の株も安いということになる。しかし産油コストが40ドル台であるアメリカのシェール企業は現在の20ドルという原油価格では今後も赤字を垂れ流し続けるだけである。以下の記事では簡単な財務分析もしている。
よって買うべきなのは20ドル台でも何とか利益を出していける低い産油コストと半年程度売上が下がっても破綻しない強固な財政を備えた企業ということになり、それは世界でもサウジアラビアのSaudi AramcoとロシアのRosneftということになるだろう。個人的にはRosneftを推したい。どちらも上場企業である。Rosneftの株価チャートを掲載しておく。
原油そのものを買うのとどちらが良いかだが、原油の良いところは原油安がいくら長引いても原油は倒産しないということである。赤字を垂れ流す企業とは違い、腐りもしないので持っていてもそれだけで損はしない(正確には保管コストがかかる)。長引けば長引くほど産油企業が倒産して将来の供給が少なくなるので、反発した時の目標高値も大きくなる。
一方で相場が反発する時には株式である産油企業の方が反発が早い可能性がある。どちらにするかは好みだろう。
空港
新型コロナウィルスの流行で真っ先に影響を受けたのは航空会社であり、飛行機が飛ばなくなれば空港の収入もなくなる。どちらも暴落しているが、半年程度の売上減にも耐えられる財政の強固な企業は航空会社よりも空港に多そうである。
以下の記事にこう書いたが、これに一番相応しいのは欧州の空港だろう。
日本は流行状況に関してはこれまで頑張っていたが、頑張っていたからこそ投資対象からは外れるのである。まだ最悪ではないということは、これから最悪になる可能性があるということである。逆に既に最悪であればこれ以上状況が悪くなることはない。
よってまずはフランクフルト国際空港を運営するFraportを紹介したい。
新型コロナ前の2019年の純資産は4,623百万ユーロ、人件費は1,223百万ユーロであり、最悪数年は耐えられそうである。1株当たり純利益は4.45ユーロ、現在の株価は39ユーロである。
また、もう1つ挙げるとすれば北京首都国際空港を運営する北京首都国際機場だろうか。
新型コロナ前の純資産は234億元、年間費用はすべて足しても80億元にも満たないのでバランスシートは鉄壁である。これまで売上高は毎年15%ほど伸びていた成長株でもある。コロナ前の1株当たり純利益は0.75香港ドル(香港上場)。しかし中国株全体が不調となる可能性は留意しておくべきだろう。
Alphabet
さて、最後は新型コロナの影響をあまり受けていないGoogleの親会社である。
アメリカのハイテク株は新型ウィルスの影響をそれほど受けていないにもかかわらず売られている。Alphabetの1株当たり純利益は49.16ドル、P/Eレシオ(株価収益率)は約23.6とそれだけ見れば割安ではないが、2019年の売上高成長率は18%であり、今後5年の平均成長率を12%と仮定すると1株当たり純利益は112ドルまで上がる。
また、本業の広告の成長率はそこそこだが、クラウドサーバなどを提供するGoogleクラウドの成長率は50%を超えており、個人的にはこちらに期待している。
新型コロナの影響はある程度はあるだろうが、株価が反発するとすれば上記の銘柄よりもAlphabetなど無関係の銘柄の方が先に上がる可能性が高く、両方を持っておきたいところである。先に上がった方を利益確定して上がっていない方に振り分けるなど、臨機応変なポートフォリオの組み方をしたい。
銘柄選択の重要さ
ざっとこんな感じである。一方で米国シェール企業やホテル業の一部、ジャンク債など破綻の匂いのする銘柄は大量に存在しており、銘柄選択が非常に重要な場面となっている。レイ・ダリオ氏のコメントをもう一度掲載したい。
わたしの予想では、一時的なショックに耐えられる銘柄と耐えられない銘柄を市場は上手く区別できず、売上への影響にばかり注意が行き、債務への影響は過小評価されるだろう。例えば一時的に大きい影響を受けるものの現金保有が豊富な企業への影響は誇張され、経済的影響は少ないものの大きな短期債務を負っている企業への影響は見落とされがちになる。
今の相場は玉石混交ということである。優良銘柄を厳選してポートフォリオに組み込みたいところである。また、日本株のリスクについては既に記事にしておいた。
このまま何もなければ良いが、このシナリオが現実化する場合、東京で展開している飲食店などの銘柄は現在の反発を利用しての空売り対象となる。
今後数日の感染者数次第となるが、とりあえず売りのポジションを持っておいて感染者数が収まれば解除するというスタンスが悪くないというのが筆者の判断である。上記の買い銘柄と同時に売りを持つことでリスクヘッジにもなる。日本の流行状況についてもここで報じてゆく必要が出てきたということである。
結論
以上銘柄のチャートは載せたが、すべての銘柄が今買いのタイミングだということではない。どの銘柄についても株価がいくらならば買えるのかを各自考えて各自のタイミングで売買すべきだろう。記事はアナリストの代わりになってもトレーダーの代わりになることは出来ないからである。
参考になるのはやはり感染者数の推移であり、そちらは今後も報じてゆく。非常に面白い相場になってきた。