アメリカの株式市場がまた史上最高値を更新した。表向きには米中通商合意を好感したということになっているが、第一段階合意がほとんど意味のないものであることは以下の記事で指摘した通りである。
この記事を読んでもらえば分かるが、株式市場は少なくとも米中通商合意で上がっているのではない。結局は金利とそれが実体経済に及ぼす影響なのである。
鈍化していた住宅価格の伸び
よって今後の先行きを占うためには、貿易に関連する事項ではなく金利が実体経済にどう作用しているかを見なければならない。その筆頭はやはり住宅価格だろう。金利が下がれば住宅ローンが借りやすくなり、住宅を購入しやすくなるために住宅価格が上昇する。
アメリカの中央銀行は少し前まで金融引き締めを行っていたが、それが2018年の世界同時株安を引き起こしたことで撤回を余儀なくされ、金利は低下した。ではアメリカの住宅価格はどうなっているのだろうか? 以下は主要20都市におけるS&Pケース・シラー住宅価格指数の前年同月比の上昇率のチャートである。
アメリカの住宅価格の伸び率は株安のあった2018年に大きく鈍化していた。株安の原因は長期金利の上昇と量的引き締めであったから、住宅価格も高金利に反応したということだろう。
一方で長期金利が低下した2019年にも鈍化は続いていたが、ここ数ヶ月で底を打っているようにも見える。分かりやすいように長期金利と住宅価格指数を並べてみよう。
10年分である。2012年の様子を見ると、長期金利が大きく下がった後に住宅価格は持ち直し、その後長期金利が上がると住宅価格が減速しているように見える。その後2018年に入って長期金利が再び上昇すると住宅価格の減速が再開し、その後長期金利がまた下がって現在に至っている。
このチャートを見る限り、ここ数ヶ月の住宅価格上昇率の動きは減速が底を打った動きのように見える。つまり、長期金利がこの近辺で動く限り住宅価格は減速しないということなのかもしれない。
株式市場が高騰する一方で、これまで伝えている通り実体経済は強弱入り混じった状況となっている。また株式市場も主要指数以外が上がっているわけでもなければ、何より米中通商合意で株価上昇という建前にもかかわらず中国株が上がっていない。
非常に微妙な状況である。この状況を整理すべく様々な統計データを検証している。住宅価格のデータと同時に以下の記事も参照してほしい。