アメリカの中央銀行であるFed(連邦準備制度)は米国時間で3月19日から20日まで金融政策決定会合であるFOMC会合を開き、2018年10月から起こった世界同時株安に対する対策を纏めた。
先ずは米国株のチャートから紹介しよう。
見ての通り下落は10月から始まったが、当初Fedのパウエル議長の示した姿勢は利上げと量的引き締めという金融引き締めを停止することはないというものだった。Fedが強硬姿勢を続ければ市場が崩壊するということは、ここでは夏頃から主張し続けていた。
しかしパウエル議長は下落が始まった後も強硬姿勢を貫き、その結果米国株は20%前後下落した。
パウエル議長はそれでようやく方向転換をすることになる。当初は量的緩和で増加したバランスシートを縮小する量的引き締めは世界同時株安の原因ではないと主張していたが、これを撤回し、量的引き締めを年内に終了すると予告した。そして今回の会合で量的引き締め終了の具体的なスケジュールを提示したということである。
FOMC会合結果
さて、では今回の会合の結果を見てゆくが、先ず金利については今年中の利上げはほぼないという結論となっている。会合参加者の今後の利上げ見通しを表にしたドットプロットでは、11人が年内の利上げなし、4人が1回の利上げ、2人が2回の利上げとし、年内の利上げがないというのがコンセンサスとなっている。
これは2回か3回の利上げがコンセンサスとなっていた前回のドットプロットからの大幅な譲歩となるが、一方で市場はより緩和寄りの金融政策を予想しており、金利先物市場はFedが年内に利下げを行う確率を40%だと織り込んでいる。
量的引き締めについては具体的に終了までの道筋が示された。前回同様、いつもは発表されない量的引き締めに関する追加文書を公表し、以下の2点を発表した。
- 2019年5月より債券保有額の減額量を月間300億ドルから150億ドルに減額する。
- 2019年9月末に債券保有量の減額を停止する。
これを受け、米国株はやや上昇、ドル円は下落、日経平均はその両方の影響を受け横ばいとなった。
相場への影響は?
さて、投資家としてはこの発表をどう受け止めるかが問題となる。筆者は昨年の下落前から日経平均とドル円の空売りを行なっており、今年に入ってからは日経平均よりもドル円の空売りに重点を置くということを主張してきた。
その理由については明白であり、Fedには緩和余地があり、日銀にはないからである。この単純な図式が2019年の世界市場を決める支柱となる。そしてその動きはドル円に反映される。今回の大きな動きは株価の下落から始まったが、次の大きな動きはドル円なのである。それが日経平均の空売り分を徐々にドル円の空売りへと移し替えてきた理由である。
とはいえ、日経平均も年始からの反発は米国株に比べて劣っている。以下は日経平均のチャートである。
ここで報告している通り、筆者は日経平均を昨年の間に23,000弱から頂点の24,000強の水準で空売りしているので、現在の水準でも10%程度の利益となる。
ここで、残っている株の空売りポジションを何処で利益確定するかということが問題となる。筆者の鉄則としては、株価の原因は量的引き締めであるから、その原因が無くなった時点で株の空売りを止めるということになる。しかし問題は、このパウエル議長の結論で「量的引き締めを止めた」と言えるかどうかである。
パウエル議長の結論は、9月までに量的引き締めを止めるということである。5月から引き締めを減額するとはいえ、9月まではまだ半年ある。
それでも量的引き締めの終了は宣言されたと言えるかもしれない。しかし筆者の頭に引っかかっているのは、これまでの金融危機でFedの譲歩が常に十分ではなかったということである。リーマンショックではFedは利下げを繰り返したが、市場暴落を止めるためには段階的な利下げは十分ではなく、Fedは結局ゼロ金利と量的緩和の開始を強いられることになった。
今回パウエル議長が言っているのは半年後に引き締めを止めるということであり、利下げさえ行なっていない。リーマンショックと今回の下落の原因が異なることは事実である。しかし、やはり量的引き締めの半年後の停止という措置が市場をなだめるために十分な措置とは思いがたく、その引っかかりの分だけ株の空売りのポジションをいまだ残している。
いずれにしても今後のメインのトレードはドル円となる。しかしそのドル円の下落幅がこれだけに留まっていることもどう考えてもおかしいのである。世界同時株安を引き起こしたような状況がこの程度の副作用で収まるはずがない。
十分な緩和が行われて株が上がり、ドル円が下がるか、十分な緩和が行われず株が下がり、ドル円も下がるか、どちらかなのである。市場はまだそのどちらも織り込んでいない。
今後の市場の展開としては、どちらかが必ず起こるだろう。それが起きない間は、市場は単に夢の中にいるのである。そして夢からはいずれ覚めなければならないだろう。
(3/23誤植を修正しました。)