2018年10月に始まった世界同時株安が反発トレンドを継続している。その中で1つ興味深いのは、米国株の反発に比べて日経平均の反発が弱いことである。
先ず最初に米国の株価指数S&P 500のチャートを掲載しておこう。
日本市場だけ見ている投資家には意外かもしれないが、米国株は既に暴落開始直後の水準まで戻りつつあるのである。一方で、日経平均の反発はそれほどではない。
これは何故か? 思い出してほしいのは、世界同時株安が始まる前の状況である。2018年の後半に株の空売りを始めたとき、新興国や欧州株などは既に下落トレンドに入っており、世界の株式市場でまだ下がっていなかったのは米国株と日経平均だけだった。
その状況で筆者は米国株ではなく日経平均を空売りすることを選んでいる。日本株のパフォーマンスの方が悪くなると予想した理由については、以前の記事で次のように説明している。
株価の暴落を止める手段がアメリカの金融引き締めの停止および金融緩和だけであるとすれば、ドルが下落するのは必然であると言える。一方で円安になる要素はほとんどない。日銀は追加緩和の手段をもうほとんど持っていないからである。
これは同時に、先進国の株式市場で日本株だけが危機発生時の中央銀行の支えを得られないことを意味している。行える緩和は既に行われており、追加で出来ることがほとんどないからである。
そしてパウエル議長が金融引き締め停止から金融緩和の再開まであらゆる選択肢をほのめかしたことで、ここから利下げに加えて量的緩和の再開まで行えるアメリカと、追加緩和の余地がほとんど残っていない日銀との対比が明らかになったのである。
今後の投資方針
読者には周知の通り、筆者は2018年の後半から日経平均の空売りとドル円の空売りの両方を行なっている。一方で、ここ数ヶ月でも書いてきた通り、ここからは日経平均よりもドル円の空売りに重点を置くべきだろう。ドル円のチャートは現在次のようになっている。
アメリカが緩和に動くにしても、株安が更に進んでリスクオフになるにしても、どちらでもドル安になるからである。結局のところ、世界経済も金融市場も金融緩和なしでは減速することが示されてしまった。これが次の大きなトレンドなのである。
一方で、日経平均の空売りは利益確定の場面を探し始めることとする。前回の記事に書いた通り、今のパウエル議長の姿勢を考えると、もう一度下落の場面が来る可能性が高いと現時点では踏んでいる。
日経平均のチャートを再掲しておこう。
しかし、それはあくまで短中期の予想、利益確定のタイミングについての話であり、空売りの利益が10%になるのか、15%になるのか、5%になるのかの話でしかない。
また、逆に株の空売りを手仕舞ったからといって、日経平均がそこから下がらないということでもない。パウエル議長が対応を誤れば株価が更に下落してゆく状況も十分あるだろう。しかしその場合でもドル円は下がるだろう。そしてパウエル議長が市場に屈して緩和を始めた場合も、やはりドル円は下がるのである。だからこれは日経平均が下がるかどうかという問題ではなく、どちらに賭ける方が有利かという問題なのである。
リーマンショックの後、アメリカが量的緩和を行なってからアベノミクス以前までの4年間、日経平均は横ばいとなったが、ドル円は下がり続けた。アメリカだけが追加緩和の可能性のある相場の今後を予想するにあたって、その期間の市場の推移は参考になるかもしれないと考えている。
日経平均の買い戻しのタイミングについて、またドル円の今後の動向について、引き続きここで書いてゆく。ドル円か日経平均かという問題は、こう言うと分かりやすいかもしれない。常に一番安全な船に乗っておきたいのである。