ドラッケンミラー氏が米国株空売り、バブル崩壊を予想

2018年10月の世界同時株安で市場がやや荒れている中、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを運用していた著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏がバブル崩壊の可能性について述べている。Business Insider(原文英語)などが伝えているので、ここで紹介したい。

量的緩和バブル崩壊

2008年のリーマンショック以来、世界中の中央銀行が量的緩和によって市場に大量の資金を供給してきた。ドラッケンミラー氏を含む世界中のファンドマネージャーは、そのバブルに乗りながらもバブル崩壊がいつかということを何年も考え続けてきた。ここでも、例えば2017年7月に次のような記事を書いている。

この時には、バブル崩壊は2017年には起きないと結論付けている。以下のように書いたのを思い出してもらいたい。

バブル崩壊とは投資家が株を売らなければならない状況に追い込まれ、その状況が変えられないものであることによって起こるのだが、2017年の市場はその状況にはないということである。

とはいえ、では量的緩和バブルは何の問題もないのかと言えば、そうではない。ここでの論点は、それを破裂させるために十分なトリガー(ブラックマンデーやリーマンショックの頃には存在していた不可避の原因)が、現状では見当たらないということである。

しかしようやくその時が来たようである。少なくとも筆者はそう思っており、ドラッケンミラー氏も同様のようである。彼は次のように語っている。

金融引き締めによって、市場はバブルのサイクルのうち、爆弾が遂に爆発するステージに差し掛かっている。利上げを連続して続ける内に、そのどれかが引き金を引くだろう。

ちなみにこのインタビューは10月の急落より前に書かれたものだが、彼の相場観は的を射ている。そして、ここの読者にはお馴染みだが、わたしとほとんど同じ相場観を彼も語っている。

流動性の縮小が引き金を引くことになる。そしてそれは新興国市場では既に起きている。いつもバブル崩壊は新興国市場から始まる。

中国やトルコ、アルゼンチンなど、新興国の株式や通貨が暴落していたことは、ここでも何度も伝えてきた。しかし大半の見方は、それでも先進国には問題がないというものだっただろう。しかし筆者の見方も、ドラッケンミラー氏の見方も異なる。

直観的には、2008年の金融危機よりも大きな危機が起こることになるのではないかと思う。何故ならば、前回の金融危機を起こした原因(訳注:金融緩和)を何倍もの規模で行なってしまったからだ。

ファンドマネージャーとしてバブルの崩壊を何度も目にしてきたドラッケンミラー氏は、金融緩和に否定的だった。筆者やドラッケンミラー氏にしてみれば、新興国が暴落し、日本株も日経平均採用銘柄以外は既に暴落していて、米国でも同じことが起こり始めている状況で、大半の投資家や政治家が楽観的に居られるということは理解に苦しむ。

しかし、バブルとはそういうものである。

さて、その相場観に基づいて、ドラッケンミラー氏は空売りを始めているようである。10月11日に書かれたYahoo! Financeの記事(原文英語)が、ドラッケンミラー氏のポートフォリオが、買い持ちと売り持ちの差し引きで投資総額の25%の空売りとなっていることを伝えている。

それでも金融緩和に反対するドラッケンミラー氏

さて、バブル崩壊を予想したドラッケンミラー氏だが、もし自分がFed(連邦準備制度)の議長だったらどうするかと聞かれて、次のように答えている。

もし自分がFedの議長なら、すべてのFOMC会合で利上げを行うだろう。

これは現在のFedの利上げ速度よりも大幅に厳しい利上げの姿勢である。つまり、ドラッケンミラー氏は金融引き締めによってバブルを崩壊させるべきだと言っているのである。

引き締めを行わなければ、膨らんだ債務という問題はより加速し、将来により大きな問題を生むことになる。

引き締めを行えば、当然経済や市場に問題が生じる。ただ残念ながら、これから生じる問題は、引き締めを4、5年前に行なっていた場合よりも大きいものとなるだろう。

つまり、引き締めを行えばバブルは崩壊するが、崩壊させなければ問題はより大きくなり、そしていずれにしてもいずれ崩壊する、ということである。さて、読者はどう考えるだろうか。

ドラッケンミラー氏のこの考え方については、以下の記事で詳しく説明している。先進国の低い経済成長率は、量的緩和が価値を生まないゾンビ企業を大量に延命させていることが原因だと論じていて、なかなか面白い記事である。

もう手遅れなのだが、日本も量的緩和についてもう一度考えるべきなのではないか。政治家が推奨する経済政策など、ろくなものではないのである。

因みに、バブル崩壊についての筆者の相場観については以下の記事を参考にしてほしい。バブルの天井では上下の両方に激しい動きを見せる相場になるが、利益が欲しければ短期的な動きをすべて無視することである。短期的な動きに惑わされる投資家は、この相場では必ず損を出す。このことについても、時間があれば書きたいと思っている。