ジム・ロジャーズ氏: 26歳の若者は最高だ

ジョージ・ソロス氏とクォンタム・ファンドを創業したことで知られる著名投資家のジム・ロジャーズ氏が、MarketWatchによるインタビュー(原文英語)で若い投資家について語っている。

現在の相場状況で言えることは、若い投資家は株式市場の暴落を経験していないということである。2008年からもう十年近く上げ相場が続いている。そして上げ相場では、その経験のなさが武器になる。ロジャーズ氏は次のように言う。

相場ですべてが上手く行っている時、誰もが26歳の若者を必要とする。強気相場では26歳のトレーダー以上に素晴らしいものはない。特にバブルの時はそうだ。彼らは恐れ知らずだからだ。

バブルは崩壊するものだということを身をもって知っている百戦錬磨のトレーダーは、上げ相場で身を引いてしまうことが多い。例えば、ジョージ・ソロス氏は百戦錬磨でありながら大きく賭けることの出来るトレーダーとして有名である。しかし、その彼をもってしても上げ相場で持ち分の何十倍のレバレッジを賭けて全力投資し、短期間で数百パーセントのリターンを上げるFX投資家のような芸当は出来ないのである。彼はリスク管理というものを知っているからである。

ロジャーズ氏はある投資会社が雇っていた若者のことを語る。

彼は1990年代の後半に2年で500%のリターンを上げた。会社の誰もが彼を歓迎していた。

しかし次の年、彼は会社の資金を蒸発させた。誰も彼を歓迎しなくなった。彼は28歳だった。

彼らはたくさん儲ける。彼らは何故自分が儲けたのか理解していない。だから何故お金を失うのかも理解していない。何が起こったのかも分からないだろう。

経験があるということは良し悪しである。下げ相場を知らない投資家は、上げ相場で恐れることなく大金を賭けることが出来る。その代わり下げ相場で破産する。経験豊富な投資家は下げ相場で事前に慎重に動くことが出来る代わりに、上げ相場で大きく賭けることを躊躇してしまうかもしれない。

最近流行りの若者バッシング

最近、アメリカの金融業界では若者を皮肉ることが流行っている。ロジャーズ氏の「26歳」発言で思い出したのは、債券投資家ジェフリー・ガントラック氏の「二十何歳か」である。Reuters(原文英語)によれば、ビットコインに懐疑的な発言のなかで彼は次のように述べている。

ビットコインが何らかの方法でハッキングされないとは哲学的に信じられない。最近、あまりに多くの二十何歳かがビットコインは完全に安全なのだとわたしに説得してきた。

お気づきだろうが、彼は明らかに、「二十何歳か」を「靴磨きの少年」と同じ文脈で使っている。

また、CNBC(原文英語)によれば、JP MorganのCEOジェイミー・ダイモン氏はビットコインを購入した娘に皮肉を飛ばした。

娘がビットコインを買った。そしてビットコインは上昇した。彼女は今自分が天才だと確信している。

事実、20代のトレーダーはリーマンショックさえ経験していない。2008年以降の上げ相場しか知らない、相場が上がることを当たり前だと思っているトレーダーが、投資銀行などのディーリングルームに座り、市場の大きな部分を占めていることには個人的にも危機感を感じている。例えば、量的引き締めに対する反応が異常に遅かったことも、投資家が低金利に慣れすぎているからではないか。

だから彼らの気持ちも理解できる。しかし、ここ数年ただビットコインにのめり込み、それをただ保有し続けた単なる素人以上のリターンを上げた人物は、こうした著名人の中に誰一人居ないということも、また事実なのである。相場とは面白いものである。