トランプ相場が後退する中、米国利上げがこれまでのところは着々と進行しつつある。米国の金融政策を担うFed(連邦準備制度)は米国時間6月14日のFOMC会合で利上げを行うと予想されており、金融市場はこの結果をほぼ織り込んでいる。
金利先物市場の織り込み
市場の予想する米国の利上げ確率については金利先物市場の数字によって計算出来るが、この数字によると、6月のFOMC会合の結果は以下のような確率で予想されている。
- 利上げなし: 4.2%
- 0.25%の利上げ: 95.8%
今回の会合での利上げはほぼ織り込まれているということである。
今回利上げがあると予想されている背景には、先ずこれまでのFedの利上げ方針がある。Fedは2017年内に3度の利上げを行うと表明しており、金融市場も2度目の利上げまでは認めている。これが6月の利上げである。
5月30日にFedのブレイナード理事が「経済指標が想定通りなら、間もなく追加の利上げが適切になる」(日経)と発言しており、Fed内ではハト派で知られるブレイナード理事が利上げを支持したことで、投資家はより6月の利上げを信じるようになったと言える。
2017年内の利上げ観測
一方で、「2017年に3度」というFedの自己申告については、投資家の見方は分かれている。2017年中の利上げ回数の予想は以下のような確率で織り込まれている。
- 1回: 1.9%
- 2回: 45.4%
- 3回: 41.4%
- 4回: 10.5%
- 5回: 0.7%
つまり、今回の2度目の利上げ以降、今年中に再び利上げがあるかどうかはほぼ五分五分だということである。
バランスシート縮小開始か?
ただ、利上げの回数よりも投資家が気にしているのが、Fedがバランスシートを縮小するかもしれないという予想である。中央銀行のバランスシート縮小とは、つまり2008年以降の量的緩和(中央銀行による国債などの買い入れ)によって大幅に拡大されたバランスシートを元の水準に戻してゆくということである。
現在、Fedの保有する大量の米国債は、満期を迎えるとともにその資金を新たな米国債に再投資することによって、Fedはバランスシートの規模を一定に保っている。この再投資を止めることでバランスシートの規模を徐々に減らしてゆこうということである。Fedは前回のFOMC会合でこのバランスシート縮小計画について話し合っている。
上記のブレイナード理事もバランスシートの縮小開始は「今年の後半が適切」と表明しており、今回のFOMC会合でその道筋が示される可能性がある。
Fedによる国債への再投資額の縮小は、トランプ相場の後退によって下落傾向にあるアメリカの長期金利(10年物国債の金利)の上昇を促す可能性があり、長期金利が上昇すれば、高金利を求める資金がドルに流入することで、ドル高となる可能性がある。アメリカの長期金利のチャートは以下のようになっている。
アメリカ経済を過信して粛々と金融引き締めを行うFedだが、前回の会合結果を報じた記事で説明した通り、イエレン議長はアメリカの経済指標を読み間違えている。このタカ派の姿勢がいつまで続くかである。