ローゼンバーグ氏: トランプ大統領の関税発表で株価暴落は加速する

Rosenberg Research創業者のデイヴィッド・ローゼンバーグ氏がBloombergのインタビューで、トランプ政権の関税政策と米国株の大幅下落について語っている。

ローゼンバーグ氏の株安予想

ローゼンバーグ氏はと言えば、去年の末に米国株のバリュエーションを酷評していたアナリストである。彼は米国株のバリュエーションが米国債のバリュエーションと同じになっていると指摘して、「米国株は無リスク資産か」と皮肉を言っていた。

彼は次のように述べていた。

どのような理性的な人間が22倍や23倍の株価収益率の株式に投資をするんだ? 株式にはリスクプレミアムがない。株式の利回りは3ヶ月物の米国債の利回りと同じだ。

トランプ政権で株高を予想する人が多かった中で、ほとんど彼だけが弱気派だった。

相互関税で株価急落

そしてどうなったか。見事に、トランプ政権にもかかわらず、株価は下落することになった。

4月2日、ドナルド・トランプ大統領が日本やヨーロッパ諸国などに対する相互関税の税率を発表した。これまで脅しとして使われていた関税が、実際に実行されるということである。

それを受けて株価が急落している。アメリカの株価指数であるS&P 500のチャートは次のようになっている。

バイデン政権のばら撒きで米国株は上がり続けていたから、こういう動きは久しぶりである。

株価は反発するのか?

トランプ氏が関税について話し始めてから株価は下がっているが、先月には一時的に反発する場面もあった。

これまで脅しだった関税が4月2日の発表をもって現実のものとなることで、投資家は4月2日が株式市場にとってどういう節目になるのかを気にしている。

投資家たちが想定しているシナリオの1つは、これまでは不確定要素だった関税が4月2日に現実のものとなり、それで悪材料出尽くしとなれば株高に転じるのではないかということだ。

株安が続くためには、悪いニュースが継続的に出なければならない。そして投資家には「最悪は買い」という考え方がある。一番悪いニュースが出たところが株価の底値であり、それ以上悪いニュースが出なければ株価は下がりようがないので、そこから株価は上がってゆく。

だがその株価反発の条件を満たすためには、悪材料が4月2日で出尽くしとなる必要がある。

ローゼンバーグ氏の相場予想

さて、ローゼンバーグ氏はこの見方についてどう考えているか。彼は材料出尽くしシナリオについて次のように述べている。

先週、空売りの買い戻しで株式市場が一時的に反発した。人々は4月2日になれば不確実性が消滅する、と言っているが、そうはならない。その後に不確実性の新たな波が来る。

ローゼンバーグ氏は材料出尽くしになれば株高になる可能性を認めた上で、4月2日はその機会にはならないと言っている。

ローゼンバーグ氏は次のように説明している。

貿易戦争は新たな場所に移った。元々はメキシコとカナダだったが、新たな貿易戦争の相手はヨーロッパとアジアだ。

わたしはカナダ人で、自動車や鉄鋼や木材への影響はどうかが話題になっていた。カナダは相互関税を受けなかったので胸をなでおろしているが、すべてが唐突で、トランプ政権は毎日方向を変える中、次に何が起きるか誰が分かるだろうか。

読んでいる本全体が不確実性に包まれており、第1章が終わって第2章が始まっただけだ。

株式市場にとっては、4月2日で材料出尽くしとなるかどうかが重要である。そしてローゼンバーグ氏は、トランプ政権の不確実性は何も変わっていないではないかと主張している。

彼はこう続ける。

唯一変わっていないことは、不確実性だ。それだけが変わっていない。

不確実性そのものが、民間経済を形成する家計と企業が支出を減らす原因となるだろう。

結論

1つ重要なことで、ローゼンバーグ氏が見逃していることは、不確実性の本が何章で終わるかは、世界的なヘッジファンドマネージャーでもあるスコット・ベッセント財務長官が意図的に決めているということである。

また、ローゼンバーグ氏の予想を見た上でもう1つ重要なことがある。株価に弱気のローゼンバーグ氏でさえ、関税そのものがアメリカ経済にダメージを与えるとは主張していないことである。

そしてSoros Fund Managementのドーン・フィッツパトリック氏も以下のように似たようなことを言っていた。

関税についての教科書通りの主張は、財務長官が言ったように企業が価格上昇圧力を吸収し、しかも価格の変化は1回きりのものだというものだ。

だが消費者や企業のセンチメントはコントロールできないものだ。そしてそれが崖から落ちかけている。

筆者も同様だが、優れたヘッジファンドマネージャーは、誰も関税そのものが脅威だとは言っていない。むしろ、メディアがそれを騒ぎ立てていて、人々がそれを信じていることが経済にダメージを与えるのである。

筆者は、そもそも関税はこの問題の本質ではなく、株安を実際に引き起こしているのは年末にローゼンバーグ氏が語っていた高過ぎるバリュエーションの方だと考えている。

そしてもっと長期の視点で言えば、Bridgewaterのレイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で説明しているように、世界経済が金利低下から金利上昇のフェイズに入ってしまったこと自体が、株価の長期パフォーマンスを根本的に変えているのである。


世界秩序の変化に対処するための原則