引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のThe Insightful Investorによるインタビューである。
今回の記事では金融危機と政府の経済政策について語っている部分を紹介したい。
膨れ上がる財政赤字
今年に入ってからヘッジファンドマネージャーの間で財政赤字が注目されている。世の中の人々はトランプ政権の関税に注目しているが、プロの目線はまったく違う場所にある。
アメリカの財政赤字は、経済危機を経る度に規模が増大してきた。GDP比の財政赤字のグラフは次のようになっている。

ガンドラック氏はこうコメントしている。
リーマンショックの時にやったことなど、コロナの時にやったことに比べれば大人しく見えてしまう。そして対応の規模はどんどん大きくなる。
経済救済の限界
金融危機のたびに財政赤字が膨らんでいるのは何故か。ガンドラック氏は次のように言っている。
危機があるたび、あらゆるものが救済されてきた。
財政赤字が膨らんでいるのは、危機でダメージを受けるはずだった企業などが救済されているからである。リーマンショックの時には、金融市場でギャンブルして大損したCitibankなどの多くの銀行に公的資金が注入された。
コロナ禍にはロックダウンに対する救済措置として、人々に現金が給付された。アメリカでは日本の何倍もの規模の現金給付が行われ、それが物価高騰を引き起こした。
では次に経済危機があった時、その資金は何処に注がれるのか。ガンドラック氏は次のように言っている。
そして最後に救済されなければならないものは政府と中央銀行だ。
中央銀行の限界
一般には、中央銀行は紙幣を印刷できるため破綻しないということがまことしやかに言われている。だがガンドラック氏はFed(連邦準備制度)について次のように述べている。
Fedは一文無しだ。2022年と2023年の国債の下落相場のお陰でFedの資産はマイナスだ。もう何も残っていない。
Fedは現金給付と自分の緩和政策によって引き起こされたインフレによる金利上昇によって、保有する国債価格の下落に悩まされている。
また、Fedは国債を保有するだけでなく、金利を支払う側でもある。だから金利上昇はFedの資産を蝕んでいるのである。
しかしだから何だというのか? 中央銀行は紙幣を印刷できるではないか。
しかし紙幣を印刷して自らを救済すること自体が、経済に紙幣を供給する緩和政策となる。そして緩和政策は、インフレを引き起こさない頃なら何の問題もないように見えていたのだが、インフレは遂に起きてしまった。
結論
中央銀行は、実は破綻する。あるいはインフレを何とも思わなければ破綻しないのかもしれないが、それは政治的に困難である。
そして問題は、次の経済危機は世界経済がインフレになって初めてのものになるということである。
インフレになってからまだ景気後退は起きていない。もし景気後退が起きた時、政府は経済を救済するために緩和をするのだろうか?
ガンドラック氏は次のように言っている。
緩和はわたしがずっと言い続けてきた限界を既に超えてしまった。緩和がインフレを引き起こすのに十分な規模に達してしまった。
そして問題は、もう一度それが出来るのかということだ。
こうして世界経済はデフレの時期からインフレの時期へと移り、自由に緩和政策が出来ない状態となった。
そして人々は莫大な政府債務という現実を受け入れざるを得なくなる。
それがレイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想している国家の衰退である。大国は緩和が自由に出来なくなったタイミングから負債とインフレによって徐々に衰退してゆく。
投資家に出来ることは、淡々とインフレから身を守ることである。金価格が上昇し続けている。


世界秩序の変化に対処するための原則