ガンドラック氏: 2025年、ドル資産からの逃避が始まった

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が自社の配信動画で最近の金融市場について語っている。

米国株の下落

米国株が下落している。大手メディアでは、金融市場がトランプ政権の関税を心配しているためだと言われている。

だがガンドラック氏はそれよりも広い視野でこの状況を見ている。彼は次のように述べている。

最近話題になっているドル建て資産からの逃避についてはもう3年ほど話し続けているが、その時が来たという感じがする。

無駄を削減することなく無駄を削減することはできない

順番にガンドラック氏の主張を見てゆこう。まずトランプ政権のニュースとしては関税と、イーロン・マスク氏率いるDOGE(政府効率化省)が挙げられ、ともに株価下落の原因だと言われているが、ガンドラック氏は次のように述べている。

DOGEについては、それが他人事である限り人は痛みを受け入れるという事実を思い出させる。

政府の無駄や汚職が嫌いな人はほとんどいないが、実際に削減が始まると、自分の取り分を削減されることだけは嫌う。

それが不当な搾取であっても、それまでそこから利益を得ていた人々は、それがなくなると怒り出す。

例えば日本でも、若者から搾取した金を年寄りに移転する年金や社会保険の制度は、実際には何の倫理的根拠もない窃盗だが、それがなくなると年寄りは怒り始めるだろう。

だがガンドラック氏は次のように言う。

削減なしでどうやって削減しろと言うんだ? 詐欺や無駄や汚職は発見されなければならないし、削減されなければならない。

わたしはDOGEが無駄を削減していることは良いことだと思っている。それだけがまともな財政を担保できる方法だからだ。

財政赤字とドル安

さて、財政はまともにしなければならないのだろうか。ガンドラック氏を含む著名投資家が今年に入って何度も指摘しているのは、財政赤字がこのまま膨れ上がれば国債発行が増え、国債の買い手がいなくなるということである。

デフレの頃ならば中央銀行が量的緩和で国債を買い入れていたのだが、インフレになると同じことが簡単には出来なくなる。

財政的に米国債の信頼性が怪しいということの他に、ドル資産を持っているとアメリカから政治的に脅されるという懸念から、特に中東やBRICSの国々がドル資産を捨ててゴールドを買っている。

去年、ジョニー・ヘイコック氏が金価格上昇の理由として説明していた。

ガンドラック氏は、最近の株安をドル資産からの逃避という文脈の中で見ているようである。彼はこう述べている。

今年に入ってからドルが弱くなっている。

ユーロが上がっている。円が上がっている。他の通貨もドルに対して上がっている。

それは欧州株が米国株よりも相対的に強くなっている理由の1つだ。

あまり欧州株を見ない読者は驚くかもしれないが、この状況で欧州株は上がっているのである。以下はドイツの株価指数DAXのチャートである。

上昇の理由は、ウクライナ情勢からのアメリカの撤退で、ヨーロッパ諸国は防衛費のために財政出動を余儀なくされているからである。

アメリカとは違って金利は上がっており、つまり国債の価格は下がっているのだが、つまりは何の犠牲もなく株高にはならないということである。

結論

DOGEが無駄を削減して株が下がり、国債が上がるならば、欧州では防衛費増加で株が上がり、国債が下がる。

今のところ、ドルが下落するターンということである。ガンドラック氏によれば、それは米国株安も含めてドル資産からの資産逃避という一連の流れの一部なのである。

ガンドラック氏は次のように述べている。

ドルが下落し始めれば、欧州株が強くなる。それが実際に起きているようだ。

代わりにアメリカでは金利が下がり、国債価格が上がっているが、それはガンドラック氏の言うドル暴落シナリオへのお膳立てのようなものだろう。

まず株価が下がり、金利が下がり、景気後退に陥って、その後の緩和によってドルと米国債が死ぬのである。

レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想している基軸通貨ドルの終焉が近づいているのだろうか。


世界秩序の変化に対処するための原則