ソロスファンド: ヨーロッパは来年までに債務危機に陥る

引き続き、ジョージ・ソロス氏の保有するSoros Fund ManagementのCEO、ドーン・フィッツパトリック氏のBloombergによるインタビューである。

今回はヨーロッパ諸国の財政状況について語っている部分を紹介したい。

ウクライナ情勢とヨーロッパ諸国

フィッツパトリック氏は、前回の記事でロシアとウクライナが和平を結んだ場合のシナリオについて話していた。彼女はウクライナ情勢は世界の金融市場にあまり影響を及ぼさないと予想していたが、原油相場については面白いシナリオを語っていた。

さて、しかしトランプ政権がウクライナから手を引いていることは、ヨーロッパ諸国には大きな意味を持つだろう。

アメリカは結局、ウクライナを防衛しなかった。当たり前である。バイデン政権の目的はアメリカ人の犠牲なくウクライナにロシアを攻撃させることなのだから、アメリカ人を戦場に投入するはずがない。

民主党のナンシー・ペロシ氏が不必要に中国と台湾の対立を煽った時と同じ話である。

トランプ政権はそういう外交から撤退しようとしている。一方で、「アメリカが助けてくれる」というありそうもないことを信じていたヨーロッパ諸国は、自分で自分を防衛する必要性が出てきた(それが当たり前である)。

ヨーロッパの財政状況

それは当然、防衛費の増額を意味する。フィッツパトリック氏は次のように言っている。

ヨーロッパがGDPの2.5%から3%を防衛費に注ぎ込まなければならなくなるとすれば、それは年間1,750億ドルだ。

どれだけの資金調達をしなければならなくなるかを考えれば、EUやその他ヨーロッパ諸国の国債発行量は非常に大きく増加することになる。

国債の発行量というものが金融市場に意味を持ち始めたのは最近のことである。何故ならば、インフレになる前まではどれだけ国債を発行しても中央銀行が買ってくれたからである。

しかしインフレになった今では、量的緩和を自由に行うことはできない。だから、中央銀行の代わりに誰が国債を買うのかということが問題になっている。

特に、ヨーロッパよりも金利が上がったアメリカではそれが問題になっている。大量の政府債務に多額の利払いが生じ始めているからである。

フィッツパトリック氏は次のように述べている。

一方で、米国の国債発行量も増えている。

ヨーロッパの債務危機

アメリカに関しては、債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏が5年以内に危機に陥るとの予想を出している。

一方で、フィッツパトリック氏によればヨーロッパが同じ状況に陥るのはもっと早いようだ。

彼女は次のように述べている。

これは明日起きるわけでなく、今後12ヶ月から24ヶ月の間に可能性のあることだが、ヨーロッパで国債の入札が不調に終わる。

ある時点を越えると、国債の買い手を確保することが極めて難しくなるだろう。

国債発行は入札形式で行われるが、国債を買いたい投資家がいなければ当然失敗に終わる。そして債券市場全体がショック状態に陥る。

そういうシナリオが来年までに来る可能性があるとフィッツパトリック氏は予想しているのである。

具体的にどの国が危ういのか? フィッツパトリック氏はいつもの大盤振る舞いで、質問には何処までも答えてくれる。

彼女は次のように答えている。

もっとも危うい国は、わたしの意見ではイギリスとフランスだ。

イギリスは、ジョニー・ヘイコック氏が以下の記事で最近例に出していたが、トラス政権時に一度財政破綻の危機に陥っている。

そういう状況がもう一度来るということだろう。

少なくとも5年以内に何かが起きるということは、ほとんど避けられないことのように見える。

レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想していた先進国の衰退が、現実のものとなろうとしている。


世界秩序の変化に対処するための原則