引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏の、トニー・ロビンズ氏によるインタビューである。
今回は経済の長期サイクルの長さについて語っている部分を紹介したい。
アメリカの債務危機
コロナ以後の金利上昇で大量の米国債に多額の利払いが発生してしまっており、ガンドラック氏はこれまでの記事で、アメリカの債務は遠からずデフォルトに近い状況になると予想していた。
借金の利払いを新たな借金で支払うようになった時、国家は終わりである。中央銀行の紙幣印刷で支払おうとしても、インフレになってしまった以上、それも副作用なしでは出来ない。
ガンドラック氏によれば、それはサイクルの問題である。最初のうちは債務をどれだけ増やし、紙幣をどれだけ印刷しても問題がないように見える。だがインフレ政策はいずれ本当にインフレをもたらし、アルゼンチンのハビエル・ミレイ大統領によればそれはいずれハイパーインフレになる。
「先進国はそうならない」と言う人もいるかもしれないが、アルゼンチンは元々日本よりも1人当たりGDPが高い先進国だったのである。
債務の長期サイクル
そもそも、アメリカやイギリスでさえ、歴史を振り返れば同じ目に遭っている。大英帝国は世界大戦時に覇権を失い、かつての基軸通貨ポンドは長期間かけて暴落した。
レイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で研究した通りである。
ガンドラック氏は、ダリオ氏の見方に同意する。ガンドラック氏は次のように言っている。
わたしやレイ・ダリオ氏やニール・ハウ氏が語っていることは同じことだ。歴史とサイクルを理解すること。
アメリカや大英帝国の破綻は、歴史上実際に起きたことである。「だがそれは何十年も前の話だ」と言う人もいるかもしれない。だがそれがポイントなのである。何故それが何十年か前に起きたのか?
サイクルの崩壊とやり直し
ガンドラック氏は、これがサイクルだと言っている。政府債務や通貨は債務膨張で一度崩壊し、そしてまた繁栄のサイクルを最初からやり直す。
だが何故人は学ばないのか。何故また債務を積み上げ、インフレと通貨暴落を繰り返すのか。
ガンドラック氏は次のように言う。
そしてこうしたことが繰り返し起きる理由は、政治システムの進歩のスピードが生物の進化のスピードのようなものだからだ。一方で技術的イノベーションは革命的なスピードで起きる。
新たなものはどんどん押し寄せてくるが、社会の仕組みの方はそれに対応できない。
そしてイノベーションのもたらす富の分け方をめぐって人々が争い合う。
興味深いのは、ガンドラック氏がこれが繁栄の結果だと言っていることである。第2次世界大戦は飛行機など技術の発展のあとに起きた。2000年を超えてからは、インターネットやAIが台頭している
ガンドラック氏によれば、それがもたらした富をめぐって人々が争うとき、債務や通貨のリセットが起きる。ダリオ氏の言うように、国民と政府の金の奪い合いが始まる。
技術が進歩しても政治のレベルは変わらないので、同じことが起きるのである。ガンドラック氏は次のように言っている。
生み出した富とその分け方のバランスが取れない。
次の崩壊はいつか
では、次に人々が争うのはいつなのだろうか。ガンドラック氏は次のように言っている。
そしてその争いは3世代か4世代ごとに起きる。前回は第2次世界大戦の時、その前は南北戦争だ。
それは大体70年か80年間隔で起こっている。そして1945年に80年を足すと2025年になる。「久しぶり」だ。
ダリオ氏も同じように、この長期サイクルは80年程度のスパンで起きると言っている。
つまりやはりそろそろなのである。
投資家は準備をすべきであり、まずはサイクルを理解することからである。債務の長期サイクルについては、ダリオ氏の『世界秩序の変化に対処するための原則』に詳しく解説されているので、そちらを参考にしてもらいたい。

世界秩序の変化に対処するための原則