DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がトニー・ロビンズ氏のインタビューで、2025年のアメリカの債務危機と実体経済の関係について語っている。
高金利の時代
世界経済にとって、コロナ前とコロナ後の大きな違いは金利である。コロナ前まではインフレ政策による低金利の時代だったが、コロナ後はインフレで高金利の時代になった。
ガンドラック氏は次のように述べている。
あなたのこれまでの常識は金利が低下している環境下でのみ起こったことだ。だから金利が上がり始めると、状況は完全に変わる。そしてそれが始まっている。2022年から金利は上がり始めているからだ。
そして金利はもう二度と2016年から2020年までの水準にはもう戻らないだろう。
Bridgewaterのレイ・ダリオ氏は、金利は金融市場全体の屋台骨だと言っていた。だから金利のトレンドの変化は、金融市場全体に大きな影響を及ぼす。
例えばコロナ前の金利低下は米国株の何十年もの上昇トレンドを支えてきたのだから、それが逆転すれば株価はどうなるのかということである。
米国債の利払いの問題
だが金利の一番大きな影響は株価に関するものではない。それでさえも一番重要なことに比べれば些事である。
ガンドラック氏は次のように言っている。
経済が減速するとき、米国債の利払いが危機的状況になるだろう。米国債の利払いはたった3年前と比べて大きく上がっている。3年前には米国債の利払いは年間3,000億ドルだった。今では1.4兆ドルだ。
そしてその金額は、GDP比では4%に達しようとしている。
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ちなみにアメリカの財政赤字はGDPの7%程度である。つまり、財政赤字の半分以上がもはや借金の利払いなのである。
アメリカの債務危機
政治家がインフレ政策によって増やし続けてきた政府債務は、低金利政策が続けられる限り何の害もないように見えたが、彼らが見逃していたのは低金利政策はいずれインフレを引き起こすということである。
そして金利が上がって借金の利払いを新たな借金によって支払うようになる。だがそれが更なる利払いを生む。
ちなみにガンドラック氏は、状況がここから更に悪くなると予想している。金利が低かった頃に発行された米国債に期限が来ると、米国政府は今の高金利で借り換えを行わなければならないからである。
ガンドラック氏は次のように述べている。
金利が1%だった大量の米国債に期限が来て、4.5%の新たな米国債に借り換えられようとしている。
このままでは税収のすべてが利払いで消えることになる。
コロナ前のデフレの時代ならば、中央銀行が紙幣を印刷して国債を買い入れれば良かったかもしれない。
だがインフレが起こってしまった今では、紙幣印刷をすればインフレが悪化する。何人かのファンドマネージャーはそれを懸念している。
だから中央銀行がアメリカの債務危機を解決することは出来ないのである。
結論
アメリカの債務危機と書いたが、それは言いすぎだ、誰もそこまで騒いでないではないかという読者もあるかもしれない。
しかしガンドラック氏は次のように言っている。
何兆ドルものこうした米国債に期限が来るとき、アメリカ国民は議論を避けられない。現状の税制と債務状況が両立できなくなるからだ。
ガンドラック氏はこれから人々が騒ぐと言っている。インフレもそうだった。筆者が最初に物価高騰の可能性を警告したのは2020年である。
だが人々がインフレを騒ぎ始めたのは2022年になってからだった。
今回も同じである。多少のラグがあるだけだ。だが安心してほしい。すぐに人々も騒ぐようになる。
特に、アメリカが次に景気後退に入る時、状況は酷くなる。
ガンドラック氏は次のように述べている。
歴史的には、景気後退時には財政赤字はGDPの4%ほど増加する。直近3回の景気後退ではコロナ禍のために9%の増加が平均だ。
次の景気後退では仮にその間の6%ほどの増加になるとしよう。財政赤字はGDPの12%か13%になる。これは危機的だ。不可能だ。
だからガンドラック氏は、米国政府が結局借金を払いきれない可能性を指摘している。ガンドラック氏は次のように言っている。
利払いに対応するために米国債が再編されることも有り得るだろう。
アメリカの財政が債務とインフレで破綻に向かってゆくこのシナリオは、ダリオ氏が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で詳しく予想しているシナリオである。
驚くべきことに、ダリオ氏はこの本をコロナ後、インフレになる前に書き始めた。各国政府が現金給付を行なった時点でそこまでのシナリオを見通していたのである。
ここまではきっちりダリオ氏のシナリオ通りに来ている。これからもそうなるのだろうか。
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世界秩序の変化に対処するための原則