レイ・ダリオ氏、2025年の株価大暴落を予想か

引き続き、世界最大のヘッジファンドBridgewaterのレイ・ダリオ氏の、Moonshots with Peter Diamondisによるインタビューである。

今回はダリオ氏が2025年の金融市場の見通しについて語っている部分を紹介したい。

2025年の金融市場見通し

ダリオ氏はこれまで、著書『世界秩序の変化に対処するための原則』に書かれているような超長期サイクルの話をしていた。

国家の高度経済成長の時期から、債務を増やしてインフレで衰退するまでの長期サイクルのうち、株式やゴールドに投資するのが良い時期はそれぞれいつか。

だがダリオ氏はインタビューの最後にもっと短期的な話をしている。2025年が投資家にとってどのような年になるかということである。

そしてダリオ氏のいつになくシリアスな口調で次のように言っている。

明らかなことだが、2025年は大きな、大きな、大きな波乱の年になる。

はっきり言えば、取り組まなければならない最初の大問題は財政赤字だ。

アメリカの財政危機

2025年に入り、ヘッジファンドマネージャーは誰もがアメリカの財政赤字の話をしている。

コロナ後の政府債務急増と金利上昇によって、アメリカは国債の利払い急増に苦しんでいる。コロナ後に急増した米国債の利払いは、今やGDPの4%に達しようとしている。

米国政府はこの利払いを国債発行によってしか賄えないので、増加した国債の利払いのために国債を増加させる最悪のスパイラルに陥っているのである。

債務危機は2025年の問題か

だがそれでも多くのファンドマネージャーの口調は、「今対処しなければ後で酷いことになる」というもので、まだ猶予があるかのように聞こえる。

だがダリオ氏はこのアメリカの債務問題がもっと差し迫ったものだと考えている。

ダリオ氏は次のように述べている。

今はまだ問題になっていない。今はまだ誰も問題だと考えていない。だが2025年の前半の内に、それは問題になるだろう。

金融市場では、今回のトランプ政権は前回のトランプ政権ほど熱狂的なムードではない。前回は株価が大きく上がった。

ポール・チューダー・ジョーンズ氏が前回と今回の違いについて語っていたことを思い出したい。

だがダリオ氏は次のように述べている。

新政権の最初の100日は楽観が支配する時期だ。

経費削減は本当に実現するのか? それは現実的なのか? 目標の数値は? それは可能なのか?

結構な数のファンドマネージャーがアメリカの債務危機に警鐘を鳴らしている。だがダリオ氏は今の状況でさえも楽観だと言っている。

金融市場を見渡せば、株式市場の姿も債券市場の姿もまだまだ平穏だと言わざるを得ない。

ダリオ氏は、この文脈で市場のことに言及していない。インタビューでは市場予想を極力避けるのがダリオ氏のスタイルである。

楽観とは何のことだろうか。市場のことだろうか。確かに、多くの機関投資家が言うような債務危機が本当に姿を表せば、その時に投資家が織り込まなければならない金融市場の姿は今の状態からかけ離れているだろう。まだ株価下落も金利上昇も何も始まっていない。

債務問題の崩壊が意味すること

ダリオ氏は次のように述べている。

国債の需要と供給のバランスの問題に政府がどう対処するかが問題だ。

アメリカ政府は大赤字なので、国債は大量に発行される。問題は、それを誰が買うのかということである。

国債の買い手が足りなければ、国債は暴落する。国債が暴落すれば金利は上がる。

そしてアメリカの金利上昇は世界の金融市場全体に影響を及ぼす。

金利上昇がもたらすもの

それはダリオ氏のいつもの言葉ではあるのだが、今回、インタビューの最後でいつもより踏み込んで発言しているように聞こえる。ダリオ氏は次のように続けている。

国債市場はすべての金融市場の基盤になっている。 その需給に問題が生じれば、あらゆる資金調達や資金繰りに影響が生じ、世界全体が大混乱に陥る。

金利上昇が他の市場に影響を与えるということの意味は、例えば株式市場では株価が下落することである。更に言えば社債や不動産などあらゆるものが下落する。

ダリオ氏は明確な言葉を避けながら、しかし明らかにそうした状況を仄めかしている。

ダリオ氏は次のように言う。

ここから1年は、今誰もが思っているほど幸せなものにはならない。

ダリオ氏が言葉を選びながらもここまで言うのはかなり珍しい。

国債の買い手不足で金利が高騰し、株価が下落するのであれば、それはダリオ氏が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で述べていた、覇権国家の崩壊の始まりである。

ダリオ氏はそれが2025年だと言った。どの機関投資家よりも時間を区切った予想なのである。


世界秩序の変化に対処するための原則