DeepSeekショックで25%の利益を上げたAI銘柄のトレードを解説する

DeepSeekショックから10日ほどが過ぎた。中国からChatGPTに匹敵するAIとされるDeepSeekが登場し、しかもChatGPTよりも大幅に低コストで利用できることから、1月27日のアメリカの株式市場ではAI関連銘柄を中心に株価が大きく下落した。

下落したAI銘柄

AI業界は長らくアメリカの独占市場だと考えられていたから、AI銘柄を中心に上がってきた米国株が一時急落したこと自体はもっともだと言える。

しかし下落した銘柄を個別に見てゆくと、その下落にはかなり不合理な部分があることは以下の記事で伝えておいた。

例えばAIの複雑な演算を処理するGPUを製造するNVIDIAの株価が下がっていたが、しかしDeepSeekはNVIDIAのGPUを使って動いている。

株価下落の理屈は、DeepSeekはアメリカの中国への半導体輸出規制で最新のNVIDIAのチップが使えず、廉価版を使ってChatGPTと同じ性能が出せたから高価なチップは要らないというものなのだが、スマートフォンなどと同じで、安いものが高性能であることは、それより高性能な商品を貶める事実ではない。むしろ逆である。

また、上の記事ではDeepSeekは実は輸出規制を回避してNVIDIAの高性能なチップを使っているという主張のあることも紹介した。

完全におかしかったLumentumの下落

だがNVIDIAの下落はまだいい。完全におかしかったのは、筆者も元々買っていたLumentumの下落である。

Lumentumは、NVIDIAのGPUを並列処理させる時に使われる、光ファイバーの光信号をデータに変換する光トランシーバーを製造する会社である。

AIの高速処理に対応するため、AIに対応したデータセンターでは高性能な光トランシーバーが大量に必要となっており、製造会社であるLumentum(世界シェア2位である)などの売上高が今ではNVIDIA以上の成長率となっているのである。

このLumentumの株価はDeepSeekショックでNVIDIA以上の下落幅となった。だが考えてみてもらいたい。NVIDIAと違い、Lumentumの光トランシーバーは輸出規制の対象にはなっていない。DeepSeekなど中国のAIが台頭し、アメリカと中国の両方でAIの開発が盛んになれば、世界シェア2位のLumentumにはプラスにしかならないはずである。

にもかかわらずLumentumの株価はNVIDIAより下がった。だから買っておいた(厳密には買い増しておいた)わけである。

下落日終値の75ドルで買い増し、買い増した分は昨日の米国市場で94ドル近辺で売ったので、10日ほどで25%の利益というわけである。

結論

考え方の根本はこうである。不合理な株価下落があった場合には、まず下落している銘柄を眺める。そしてそれぞれ下落が妥当かどうかを分析する。

その後、不当な理由で下落しているが将来有望な銘柄で、かつ他の銘柄よりも大きく下落している銘柄に絞って買いを入れる。

NVIDIAの下落も不合理なのでNVIDIAでも良かったではないかと思う人もいるかもしれないが、どれだけ有利な条件で投資を決めたかのかということ後の結果に繋がる。結局、Lumentumの方が早く大きく反発している。それはLumentumの下落のほうが不当で、にもかかわらずより大きな下落幅だったからである。

株式市場では不合理な下落が続くこともある。だから不当に下落している銘柄の中でも、投資家にとって一番条件が有利な銘柄を見つけてそこに投資すべきである。

経済学者ラリー・サマーズ氏はDeepSeekショックについて次のようにコメントしていた。

一番成功する投資家は、こうした状況で大局に立って判断し、ポジションを多少調整するが、1日1日の市場の動きには過剰反応しない人だ。

筆者のLumentumのトレードはまさにそういうものだったと言える。綺麗にトレード出来たので満足している。Lumentumの長期ホールド分のポジションについては、何も変わっていない。当然継続である。