ジョージ・ソロス氏のクォンタム・ファンドを長年運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏の今年初のインタビューである。
アメリカの金利動向
金利は株価に影響を及ぼす大きな要素だが、今年は特に金利に注目すべき年である。
債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏は、Fed(連邦準備制度)の利下げにもかかわらず金利が上がっているのは異常だとして、米国債に危機が迫っていると警告していた。
長期金利はまさに9月の利下げ開始を基点に上昇している。利上げではない。利下げである。
ガンドラック氏はこの動きを、米国債から資金が逃避している証拠だとしている。
金利上昇を予想したドラッケンミラー氏
だがこの異常事態を的確に予想していた人物がいる。ドラッケンミラー氏である。
- ドラッケンミラー氏が米国債空売り、アメリカのインフレは10%を超えて再燃する可能性 (2024/10/4)
- ドラッケンミラー氏: 米国が0.5%利下げをした日に米国債を空売りした (2024/10/26)
ドラッケンミラー氏は去年の利下げ開始の直後に次のように言っていた。
金利が短期的にどうなるかの予想はこうだ。パウエル議長は間違っており、来年インフレは加速する。国債の金利は何パーセントも上がるだろう。
ガンドラック氏が異常と呼んだ事態を、ドラッケンミラー氏は完全なタイミングで読んでいたわけである。
そしてドラッケンミラー氏は今、次のように言っている。
米国債の空売りポジションはまだ持っている。利下げの後に金利が上昇したことに多くの人は驚いたが、わたしは驚かなかった。
Fedが過ちを犯したと考えていたからだ。
ドラッケンミラー氏はFedの利下げは性急だと考え、利下げがインフレ再加速の懸念を呼び、長期金利はむしろ上がると考えた。そしてそれが的中した。
米国債の下落
アメリカ経済の問題は利下げだけではない。ドラッケンミラー氏はアメリカの財政について次のように言っている。
アメリカは大きな財政問題を抱えている。年金などの避けられない支出と米国債の利払いだけで歳入のすべてが消えている。
国債の利払いは機関投資家の誰もが気にしている問題だ。コロナ後の金利上昇と政府債務の増加によって、アメリカのGDPの4%近くが米国債の利払いだけで消えている。
ドラッケンミラー氏は次のように結論している。
状況はかなり進行しており、野球で言えば7回まで来ている。だが相場では7回から9回までで大きく儲けられることがある。
Fedの緩和が進み、バブルになった資産価格とトランプ政権のもたらすアニマルスピリットが組み合わされば、インフレを上向かせることになる。
それが債券市場に問題を引き起こす。だから米国債の空売りを続けている。
『世界秩序の変化に対処するための原則』においてインフレと金利上昇を予想したBridgewaterのレイ・ダリオ氏などは、アメリカの破綻に備えて新著まで発表している。いよいよアメリカの財政がまずくなってきている。
世界秩序の変化に対処するための原則