ガンドラック氏: 米国株が上がり続けた過去数十年の相場はもう帰ってこない

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏の今年初の自社配信動画である。

今回は長期的な金利の推移について語っている部分を取り上げたい。

下がらない長期金利

ガンドラック氏は年始早々、アメリカの国債市場の危険性を指摘していた。前回の記事では、Fed(連邦準備制度)が利下げをしているにもかかわらず長期金利が上がっていることは異常で、米国債から資金が逃避している証拠だと主張していた。

原因の1つはコロナ後の金利上昇で米国債の利払いが増え、国債の利払い費用だけでGDPの4%近くに達していることである。

アメリカは国債の利払いのために新たな国債を発行しており、急増する国債に対して買い手が追いついていない。

景気後退時の国債市場

アメリカ経済がまだ無事な状況でも国債に買い手が見つからなくなりつつあるのに、景気後退に入って財政赤字が大幅に増えたら米国債はどうなるのかというのがガンドラック氏の主張である。

だが通常の環境であれば、景気後退になるといわゆる「安全資産」である国債に買いが入り、金利は下がるのが普通だ。

だがガンドラック氏はこう言っている。

「過去40年、景気後退時に長期金利が下がらなかったことはない。何故長期金利が下がらないと思うんだ?」とある人がわたしに言った。

それは長期的な相場環境がこれまでとは違うからだと答えた。

その人は「今回は違うということか、でも金融業界が長いわたしはそれが危険な言葉だということを知っている」と反応した。

ならあなたにはニュースになる。今回は違う。

「今回は違う」はバブルを正当化する時に金融業界でよく使われる言葉だ。バブルはいつも崩壊してきたが、今回は違うというわけだ。

金利の長期的な推移

しかし金利に関してはガンドラック氏は今回は違うと言っている。読者はどう思うだろうか?

これまで数十年の相場とは、金利が下がり続けた相場である。短期的に上がることはあっても、景気が悪くなる度に金利は大幅に下がった。

そうして40年間、金利は長期的に下がり続けてきたのである。

この長期的な金利低下は株式市場にも当然影響を与えた。金利低下は株価にとってプラスだからである。金利が10%以上も下がったのだから、それが株式市場にどれだけプラスだったのかを考える必要がある。

だが問題は2つある。1つは、金利がずっと低下できたのはインフレにならなかったからで、今はインフレになっているということ、そして金利がこの40年と同じように下がることは有り得ないことである。

ガンドラック氏は、これまでの環境が続くと考えている人に対して次のように指摘している。

今の相場環境は長期的に金利が低下する相場ではない。1980年前半から2020年までの長期金利の13%の低下をもう一度繰り返せないということは、誰でも同意するだろう。

結論

ガンドラック氏は次のように纏めている。

今の相場環境はこれまでとは違う。誰でもこの新しい環境をどう生き抜くのかを考えなければならない。

それが金融市場にどう影響を及ぼすかである。Bridgewaterのレイ・ダリオ氏はそのためにコロナ後にすぐ『世界秩序の変化に対処するための原則』を書き、新たな環境がどのようになるのかを予想した。

そして更に新著を発表しようとしている。

ガンドラック氏を含め、米国債に警鐘を鳴らす機関投資家は多い。今年は米国債に注目である。


世界秩序の変化に対処するための原則