ガンドラック氏: 利下げで長期金利が上がっているのは米国債暴落の予兆

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏が今年初めての動画配信でアメリカの金利と財政問題について語っている。

米国株下落の理由

年末年始から、株式市場がやや不安定になっている。米国株のチャートは次のようになっている。

ガンドラック氏によれば、その原因はFed(連邦準備制度)の利下げと金利の関係だという。

ガンドラック氏は次のように述べている。

Fedが最初の利下げを行う前までは、金融市場は2025年に1.5%の利下げを織り込んでいた。それが今では今年1回(訳注:0.25%)強の利下げしか織り込んでいない。

それはここ数週間株式市場がハッピーではない理由の1つだ。株式市場は大きな利下げを期待していたからだ。

Fedが9月に利下げを開始して以来、当初は大きな利下げを期待していた市場だが、その期待もしぼんでしまった。

しかも更に重要なのが長期金利、つまり10年物米国債の金利の動きである。

上昇している長期金利

問題は、9月の利下げ開始以来、長期金利が上昇を続けていることである。長期金利のチャートは次のようになっている。

ガンドラック氏は次のように述べている。

利下げは通常株式市場にプラスなのだが、今回は金利は違う動きをしている。

これまでFedが利下げをして長期金利が上がったことはない。今利下げ開始から88営業日目だが、利下げから88営業日でこれまで最悪のケースは、長期金利が横ばいというものだった。

だが今回、Fedの利下げ開始から長期金利は1.70%上昇している。

長期金利の上昇とアメリカの債務危機

利下げをしたのに長期金利が上がっている。その状況をガンドラック氏は次のように分析している。

今回は何かが違う。そしてそれはここ数年話題にし続けてきたことが関係している。

金利が上がっているということは、国債の価格が下がっているということだ。そしてガンドラック氏は、インフレ懸念から利下げによって長期国債からの逃避が起き、長期国債の金利が利下げによってむしろ上がってしまう可能性を警告し続けてきた。

だがガンドラック氏が懸念していたのは、景気後退時に利下げをして、それがインフレ懸念を呼ぶ可能性だ。だが今では景気後退が来てさえいないのに、既に米国債から投資家が逃げ出していることを意味する。

結論

ここの読者なら周知のことだが、問題の根源は金利上昇によってアメリカの膨大な政府債務に多額の利払いが生じ、米国政府が借金の利払いを借金増加によって返済していることである。

アメリカは国債をどんどん発行しなければならなくなっているが、買い手がいないので価格が下落しているのである。

景気後退になってさえいないのに既に米国債が下落しているのだから、景気後退になって国債の発行量が更に増えれば、米国債はどうなってしまうのか。

それはレイ・ダリオ氏が『世界秩序の変化に対処するための原則』で予想した、覇権国家の終わりの始まりである。ガンドラック氏は次のように纏めている。

Fedが利下げを始めてもそれは効かなかった。見ての通りだ。

市場では何かが起こっている。


世界秩序の変化に対処するための原則