ガンドラック氏、トランプ政権に参加して米国の債務削減しようとする

引き続き、DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏のCNBCによるインタビューである。今回はトランプ政権の財政支出について語っている部分を取り上げたい。

景気減速とトランプ政権

前回の記事でガンドラック氏はインフレ減速を予想しながら、長期の金利に関しては上昇を懸念していた。

その理由は、米国債の乱発で国債価格が下落する可能性があるからである。

そしてガンドラック氏の見立てでは、トランプ氏はまさに国債を乱発しそうな新大統領だということだ。

ガンドラック氏は次のように述べている。

残念ながら、トランプ氏は景気刺激を行ないたいとはっきり明言している。そしてトランプ氏は常に債務の男だ。

不動産で成功したトランプ氏だが、不動産と言えばローンである。だからトランプ氏は借金を大いに利用することによって成り上がった人物であると言える。

しかも今の状況はトランプ氏にばら撒きの口実を与えている。アメリカ経済は確かに減速しかかっているからである。

その状況でトランプ氏が大統領に就任すれば、国債の発行量はどうなるか。ガンドラック氏は次のように言っている。

トランプ氏は選挙戦において減税を行なうと言っていた。トランプ氏は景気減速時の景気刺激に完全に乗り気だ。それは彼のDNAに組み込まれている。

アメリカ大統領選挙の結果

しかも今回の大統領選挙ではトランプ氏が大統領に選ばれただけでなく、上院と下院を共和党が押さえている。

つまり、次期トランプ政権は議会の制約なくやりたいことをやれるということである。

ガンドラック氏は次のように続けている。

下院まで共和党になれば、大量の借金が積み上げられることになる。

長期の金利は高くなり、それに対してFed(連邦準備制度)がどう反応するかは興味深い。

だからアメリカの債務問題を本当に心配している。

政府効率化省

だがここで出てくるのがイーロン・マスク氏の「政府効率化省」だ。SDGs推しのリベラルからトランプ支持へと鞍替えし、トランプ氏に多額の献金をしつつ選挙戦を支えたマスク氏は、トランプ氏によって政府の無駄を削減する新設の政府効率化省のトップに任命された。

マスク氏はTwitterを買収し、社員の8割をクビにした人物である。驚くべきことに、それでもTwitterは今でも何とか動いている。8割の社員がいなくとも実は会社は回るというのはなかなか衝撃的だ。

そしてそのマスク氏が今度はアメリカ政府の無駄を削減するという。国債の発行過多による米国債下落を心配しているガンドラック氏は次のように言っている。

だからイーロンがトランプ政権に関わっていることは良いニュースだ。トランプ氏とイーロンは政府支出を減らすことについて話し合っている。非常に興味深い。

アメリカの債務問題とマスク氏

米国債の価格下落を心配しているのはガンドラック氏だけではない。スタンレー・ドラッケンミラー氏やポール・チューダー・ジョーンズ氏などのヘッジファンド業界の大物たちは、インフレ再加速を予想した上で米国債の下落をメインシナリオとしている。

詳しくは以下の記事に書いたが、金利上昇で莫大な政府債務に利払いが生じてしまって以来、アメリカの財政はかなりまずい状態にあるのである。

国債の発行過多による価格下落のシナリオが実現すれば、レイ・ダリオ氏が著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で予言していた、アメリカが遂に大英帝国やオランダ海上帝国のようにインフレと債務によって衰退する道への第一歩となってしまうだろう。

だから、Twitterの社員を8割削減したマスク氏の肩には、今やアメリカ政府の運命がかかっていると言っても過言ではない。

債券の専門家であるガンドラック氏も助力を惜しまない考えである。ガンドラック氏は次のように述べている。

イーロン、もしこれを聞いていたら電話をくれ。1兆ドルか2兆ドルくらい支出を削る助けになれる。アメリカにはそれが必要だ。


世界秩序の変化に対処するための原則