ジョージ・ソロス氏のソロス・ファンド・マネジメントを運用しているCEOのドーン・フィッツパトリック女史がGoldman Sachsのインタビューでアメリカの金融市場について語っている。
フィッツパトリック氏の相場観
久々のフィッツパトリック氏のインタビューである。彼女は金融業界で筆者が尊敬する唯一の女性ファンドマネージャーであり、最近ではアメリカ経済は利上げでもすぐには景気後退にはならないとの予想を的中させている。
実際、アメリカ経済は大統領選挙まで持ちこたえた。では今後はどうなるのか。
フィッツパトリック氏は今の経済を次のように見ている。
複数の中央銀行が利下げをし、デフレになっており、経済成長はそこそこだ。
興味深いのは、フィッツパトリック氏が今の経済をデフレだと見ていることである。これは何人かの著名投資家がインフレ再燃を懸念しているのと対照的である。
フィッツパトリック氏の株価見通し
デフレで利下げが今の経済ならば、フィッツパトリック氏が株式市場をどう見ているのかは明らかだ。コロナ前までのデフレと金利低下の時代には、株価が上がったからである。
フィッツパトリック氏は次のように述べている。
S&P 500が22%上がったという事実に囚われるべきではない。株式を買い持ちにすべきだ。
様々なリスクシナリオはあるから、それが起きた時にパニックになって売るのではなく買い増しができるようなポジションの規模にしておくべきだが。
米国株は現在次のように推移している。
フィッツパトリック氏の金利見通し
では金利はどうか。デフレと言っていたから金利上昇は予想していないのだろうが、彼女は次のように述べている。
債券について言えば、わたしたちは国債の保有を減らしてはいるが、それでもまだ買い持ちだ。
これまでのところレンジトレードをしている。10年物の金利が4%以上ならば買い、3.75%以下になれば売っている。
債券の価格上昇は金利低下を意味しているので、やはりどちらかと言えば金利が下がる側に賭けていることになる。レンジトレードなので、金利は上がりすぎず下がりすぎないということだろう。
アメリカの10年物国債の金利は次のように推移している。
フィッツパトリック氏のレンジはここ半年のレンジよりも低い側に設定されている。やはりどちらかと言えば金利低下を予想しているのだろう。
米国債については新政権による財政支出のための国債の大量発行が国債の価格を下落させるリスクが指摘されている。
こうしたリスクに弱いのは期間の長い債券だが、フィッツパトリック氏は期間が長くなるにつれて金利が高くなるという期間プレミアムの話を持ち出して次のように言っている。
期間プレミアムはもっと大きいべきだと思っているので、10年物よりも長期のものはあまり買いたくない。
結論
これまでのアメリカ経済を誰よりも的確に当ててきたと言えるフィッツパトリック氏の予想は、他の機関投資家のものと違っているように見えて根底の部分は似通っている。
ソロス氏のファンドをフィッツパトリック氏よりも前に運用していたスタンレー・ドラッケンミラー氏は、金利上昇リスクによりフィッツパトリック氏よりも株式市場に警戒してはいたが、株式を買い持ちにすることに反対はしていないような雰囲気だった。
金利低下予想に関してはフィッツパトリック氏よりも過激なジェフリー・ガンドラック氏もいる。そちらの記事も参考にしてもらいたい。