引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを運用していたことで有名なスタンレー・ドラッケンミラー氏のノルウェー銀行によるインタビューである。
今回の記事では世界有数のファンドマネージャーであるドラッケンミラー氏が、人生最大の失敗について語っている箇所を紹介したい。
人生最大の失敗
ドラッケンミラー氏は、世界でも数少ない、資産が減少した年のないファンドマネージャーである。それはウォーレン・バフェット氏はもちろん、ドラッケンミラー氏の元上司であるジョージ・ソロス氏でさえ達成していない。
そんなドラッケンミラー氏でも、勿論失敗したトレードはある。1年の間には資産が下がったタイミングもあっただろう。何十年もトレードしてきたのだから、大きな成功も失敗もあって当然である。
だがそんなドラッケンミラー氏が人生最大の失敗として挙げるのは、筆者にとっては非常に意外な時期のトレードだった。
ドラッケンミラー氏は次のように話している。
これまで最大の失敗の1つは、コロナ後のインフレを早く予想し過ぎたことだ。
コロナ後のインフレ
ドラッケンミラー氏がまさかコロナ後のインフレを最大の失敗トレードに挙げるとは筆者も思っていなかった。何故ならば、ドラッケンミラー氏は2021年、世間では誰もインフレを気にしていなかった時期にインフレに警鐘を鳴らした機関投資家の1人だったからである。
インフレが2022年2月に始まったウクライナ情勢のせいだというマスコミのデマを信じている人には、この記事の日付が2021年2月であることは意味不明だろう。インフレの原因はコロナ後の現金給付なのである。
だからドラッケンミラー氏の予想は見事に当たったのだが、何故このトレードが失敗だったのか。
ドラッケンミラー氏は次のように語っている。
インフレ予想には強い自信があったので、2021年の春にパートナーのクリスチャン・ブローダとともにウォール・ストリート・ジャーナルに記事を書いた。
わたしは2年物米国債の大規模な空売りポジションを持っていた。
国債の価格下落は金利上昇を意味するが、2年物国債の金利は政策金利の見通しを織り込んで推移するので、コロナ後に政策金利がゼロだった当時、ドラッケンミラー氏は政策金利は上昇すると予想したわけである。
そして政策金利が上がったことは誰もが知っている。何故それが失敗なのか? ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
2年物国債の金利は0.15%だった。わたしはそれまでの金利の常識に縛られ、1.5%辺りまで上がったところでそのほとんどを利益確定してしまった。
0.15%から1.5%は大きな勝利のように見えるが、誰もが知っているように金利はその後5%まで上がった。
結論
2年物国債の金利は結局こうなった。
それでも利益は出たではないかと思うかもしれないが、ドラッケンミラー氏の気持ちはよく分かる。投資家にとってはこういうトレードが一番痛い。
ドラッケンミラー氏は次のように述べている。
あの空売りを持ち続けなかったことを本当に後悔している。
だが失敗談を公のインタビューで気軽に話せるのは、それを補ってあまりある成功談がいくらでもあるドラッケンミラー氏の自信を示している。
ちなみにドラッケンミラー氏はNVIDIAを手放したことも後悔している。
だがそれも利益を出したトレードだ。
ドラッケンミラー氏には勿論大きな損をしたトレードもある。以下の記事もなかなか面白いので未読の人は読んでもらいたい。