引き続き、ジョージ・ソロス氏のクォンタムファンドを長年運用していたことで知られるスタンレー・ドラッケンミラー氏のノルウェー銀行によるインタビューである。
金利上昇と株式市場
これまでの記事では、ドラッケンミラー氏はインフレの再燃と金利の上昇を予想していた。
新大統領の景気刺激とFed(連邦準備制度)の利下げが経済を過熱させるからである。この点においては他の機関投資家も同意している。
債券投資家のジェフリー・ガンドラック氏だけが金利低下を予想している。
株式市場の動向予想
では株式市場はどうなのか。景気刺激は株価にプラスだが、金利上昇はマイナスである。
ドラッケンミラー氏はこのインタビューで、株式市場で一部の銘柄だけが大きく上昇していることについて聞かれている。それはバブルの兆候ではないのかということである。
米国の株式市場ではしばしば、AppleやMicrosoftなどのマグニフィセントセブンと呼ばれる少数の銘柄が株価指数を押し上げているのではないかということが言われてきた。
また、これまで大きく上がった銘柄と言えば、何よりドラッケンミラー氏が少し前まで持っていたAI銘柄のNVIDIAである。
銘柄の集中はバブルか
株価の上昇が一部の銘柄に集中していることはバブルの兆候なのか。ドラッケンミラー氏は次のように言っている。
銘柄の集中は良いことではない。これまで上昇銘柄の集中なしに下落相場が始まったことはない。
日本株でも、ファーストリテイリングなどの一部の銘柄だけが日経平均を押し上げている状況は、逆に言えば市場全体に資金が行き届いていないことを意味している。
だから筆者も市場全体を表すTOPIXに対し、225銘柄のみの日経平均がどれだけ上がっているかを指標としてよく見ている。
だがNVIDIAなどのいわゆるマグニフィセントセブンだけが上昇している状況は、ここ半年ほどでかなり解消された。ドラッケンミラー氏は次のように言っている。
銘柄の集中は良いことではないが、今は4月の状態ほど集中しているわけではない。
株価上昇は他の銘柄にも広がりつつある。金融銘柄は好調になってきた。
大統領選挙の前後の金利上昇によって、例えば国債保有で金利を得る銀行株などの銘柄は上昇した。以下はアメリカの銀行大手、Wells Fargoの株価チャートである。
だから現状の米国株について、ドラッケンミラー氏は次のように分析している。
今は下落の条件が整いそうになりつつある程度には上昇銘柄は集中しているが、まだ初期の段階だ。黄信号ではあるが赤信号ではない。それがわたしの読みだ。
だがそれは、長期金利が4%半ばで推移している現状において赤信号ではないという意味である。しかしドラッケンミラー氏は、金利が7%まで上がる可能性を指摘している。そうなれば、株価についても話は違ってくるだろう。
「上昇銘柄の集中なしに下落相場が始まったことはない」というドラッケンミラー氏の言葉を肝に銘じながら、米国株を見守りたい。