11月5日のアメリカ大統領選挙でドナルド・トランプ前大統領がカマラ・ハリス副大統領を破り、当選確実となった。トランプ氏は大統領に返り咲くことになる。
トランプ氏が当選した理由
大統領選挙の開票速報ではトランプ氏の優勢が伝えられてはいたが、結局トランプ氏はそのリードを保ったまま勝利した。郵便投票が開票されるにつれ民主党が強くなるいつもの現象は、今回はあまり起きなかった。
筆者はトランプ氏の勝因について、ハリス氏の人格が露呈するのに十分な時間があったことだと分析している。9月の記事でハリス氏の勝利条件について次のように書いておいたことを思い出したい。
今回の大統領選挙は、ハリス氏がどれだけ喋らずにいられるかによって決まるだろう。彼女は特に女性の支持者を失いかねないパーソナリティを秘めている。沈黙は金である。
日本の人々はハリス氏の人柄についてほとんど何も知らなかったし、今でもほとんど知らないだろうが、ハリス氏がインタビューなどを受けるにつれそれが露呈してしまったのである。
米国株は上昇
詳しくは彼女のインタビュー動画を見るほかない。だがもう終わった話である。トランプ氏が勝利した。だから今後の経済政策はトランプ氏が決める。それが投資家にとって重要なことである。
金融市場はどう反応しているか。まず米国株は上昇した。以下はS&P 500のチャートである。
トランプ氏がこれから行なう減税や規制緩和に素直に反応した形となる。
興味深いのは小型株指数であるRussell 2000がそれ以上に上がっていることで、株式市場はトランプ氏の経済政策が中小企業にとってプラスになると考えているのだろう。
金利も上昇で反応
そして当然のことだが、金利も上昇している。アメリカの長期金利は次のように推移している。
それに伴いドル円も上昇している。
市場の期待インフレ率も上がっており、トランプ氏の経済政策によって市場がインフレを予想していることが分かる。
インフレ懸念による金利上昇こそが、ここでも紹介してきた機関投資家たちが大統領選挙のメインシナリオとしてきたことである。
大統領選挙の前後の動きで彼らは利益を上げたことだろう。問題はこの金利上昇が将来的に株価にどういう影響を及ぼすかである。
貴金属は下落
だがとりあえず他の市場も見てみよう。最近注目されていた金価格だが、金利上昇に反応して1日としては大きな下落となった。
筆者の推しているプラチナも下落となったが、1日の下落幅はゴールドより少ない。
貴金属については2016年のトランプ氏当選の後の動きが恐らく参考になるだろう。2016年11月にトランプ氏が当選したとき、金価格は金利上昇に反応して一度下落したあと、インフレ率上昇に反応して上昇していった。
今回も金利上昇(下落要因)とインフレ率上昇(上昇要因)の両方が金相場を支配していることは同じである。だがインフレ懸念は2016年よりも今の方が遥かに大きい。
貴金属相場は2016年の価格推移にインフレ懸念を足した形になるのではないかと予想している。トランプ相場以外の要因については以下の記事を参考にしてもらいたい。
右往左往する原油価格
さて、最後に政治的に重要な原油相場を見ておきたい。
トランプ氏当選で原油価格がどうなっているかと言えば、あまり動いていない。
経済面だけを考えれば景気刺激は原油価格を押し上げるはずなのだが、原油価格が上がっていない理由はトランプ氏が原油価格を下落させることを公約にしているからである。
トランプ氏の目的は2つあり、まずは原油価格が下がればインフレ率が下がること、そしてもう1つは原油価格が低い状態ならウクライナに関してロシアとより良い条件で交渉できるからである。
だからトランプ氏は原油価格を何とか押し下げたい。そのトランプ氏の思惑と景気刺激による原油価格の押し上げ圧力の矛盾が今の膠着状態を作っている。
ちなみにトランプ氏が原油価格を実際にどれだけ押し下げられるかについては、以下の記事で分析している。
結論
ということで、トランプ氏の大統領選挙勝利後の金融市場は株価上昇、金利上昇、ドル高、金価格下落という点で2016年のトランプ相場と似通った状態に今のところなっている。2016年の相場については詳しくは以下の記事を参考にしてもらいたい。
また、トランプ相場に乗る方法についてはポール・チューダー・ジョーンズ氏が解説している。
さて、問題は一部の機関投資家が言うように、金利上昇が株価にとって致命的になる水準に達するかどうかである。それはまた別の記事に書きたいと思っている。