世界最大のヘッジファンドBridgewater創業者のレイ・ダリオ氏が自身のブログで最近の中国株の急上昇の原因について語っている。
中国株が急上昇している理由
もう3年も暴落を続けていた中国株がここに来て急上昇している。その理由は中国政府が発表した景気刺激策である。
ダリオ氏は次のように述べている。
先週、習近平主席と政治局、中国証券監督管理委員会、中国人民銀行を含む中国の指導部は、財政・金融政策のリフレ的なパッケージを発表した上で、自由市場を支持することを表明した。
それはデフレ的な信用縮小を止め、生産性を刺激するための大きな一歩だ。
中国政府は先月末、2024年の成長目標達成のための景気刺激策を発表した。ロイターによると、中国はおよそ2兆元の特別国債を発行する予定だという。
中国ではもう3年も巨大な不動産バブルの崩壊が続いており、このまま行けば日本のバブル崩壊よりも酷くなると予想されていた。
だから中国政府は動いたわけである。それで中国株は20%以上も急騰している。以下は上海総合指数のチャートである。
ダリオ氏はこう説明している。
中国政府の発表は、中国の資産価格が非常に割安になっていた(今でもそうだ)時に起こった。
中国市場が爆発的に上昇しているのは、そういう燃えやすい要因が積み重なってのことなのだ。
結論
中国政府の発表に対して、20%以上の株価上昇というのは妥当なのだろうか。
例えば国債発行の2兆元という金額は、中国のGDPの約1.5%に相当する。それは決して小さくはないのだが、日本のバブル崩壊よりも大規模な中国の不動産バブル崩壊を止めるには規模が足りないだろう。
何故ならば、少し前に話題になった不動産大手の恒大集団の負債だけでちょうど2兆元あるからである。
つまり、2兆元という金額は不動産会社1社分の負債を帳消しにするに過ぎない。中国の不動産バブル全体をどうにかするには、それではまったく足りないはずである。
結論
だからダリオ氏は次のように言っている。
もし中国当局が本当に経済のためにやれることを何でもやるならば、中国にとってこの1週間はマリオ・ドラギ氏が「ECB(欧州中央銀行)はやれることは何でもやる」と言った週と同じぐらい重要なものとして経済史の書物に記されるだろう。
だが「やれることは何でもやる」ためには、今回発表されたものよりも多くの政策が必要になる。
中国株の上昇は、中国政府が引き続き何か対策を打ってゆくという期待も含めてのものなのだろう。
ダリオ氏は以前から中国政府に緩和を奨めていた。ダリオ氏の言う通りにすれば、中国経済はバブル崩壊から立ち直るのだろうか。
ダリオ氏は著書『世界秩序の変化に対処するための原則』で中国はいずれアメリカを超えて世界1位の経済大国になると予想している。ただ、そのためにはまず現在の危機から脱することが必要だろう。
世界秩序の変化に対処するための原則