ガンドラック氏: アメリカの景気減速が止まらない理由、失業率上昇は悪化する

DoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏がUBSのインタビューでアメリカ経済の見通しについて語っている。

利下げを開始したアメリカ経済

アメリカではコロナ後の現金給付によるインフレで長らく高金利政策を続けていたが、最近インフレがようやく2%台にまで落ち着いたことからFed(連邦準備制度)は利下げに踏み切った。

インフレは収まったものの経済成長はまだ強く、株式市場は市場最高値付近で推移している。だからFedのパウエル議長はソフトランディングを楽観している。

アメリカは金利を5.25%まで上げても実体経済はこのまま無事なのか。少なくともそう思っていない人物が1人いる。ガンドラック氏である。

失業率と長短金利差

ガンドラック氏は次のように述べている。

アメリカ経済はかなり弱くなっている。失業率の上昇はかなり説得力のある証拠だ。

失業率は筆者も今年の前半からずっと指摘し続けている指標である。失業率は次のように推移している。

失業率が上昇トレンドに入るとき、過去のデータによれば景気後退は避けられない。7月の記事で次のように書いておいた。

チャートを100年近くにわたって検証してみれば、失業率の上昇が前年との差で0.5%以上に達した場合、景気後退を逃れられたケースは戦後1度もない。

コロナ後の労働市場

今回も同じようになるのだろうか。ガンドラック氏はコロナ後のアメリカ経済を振り返って次のように言っている。

ロックダウンの後は、労働者への需要が供給に比べてあまりに多かった。だがここ2年と少しでそれは解消されつつある。

アメリカでは、ロックダウンで一度仕事を辞めた人が長らく職場に戻って来ず、人手不足の状況が続いていた。それが失業率の低下に繋がっていた。企業が必死で労働者を探している状況だったので、それが賃金インフレに繋がったのである。

だがそれがここ2年半ほどで解消されつつある。ガンドラック氏は次のように述べている。

労働に対する需要が供給よりもあまりに強かった状況から、今ではその逆になりつつある。だがその2年半続く新たなトレンドは止まる気配がない。供給が需要よりも強くなっていっている。

それは賃金インフレが緩和されたという意味でもあり、失業が増えたという意味でもある。それがここ最近の失業率上昇である。

失業率上昇の意味

失業率のグラフを見れば分かるが、一度始まった失業率のトレンドは簡単には転換されない。失業率のグラフは低下も上昇も数年単位で続いている。例外はコロナショックの急上昇だけである。

このトレンドが正しければ、現在少しだけ上昇し始めている失業率はこのまま上まで行くことになる。

結論

ガンドラック氏は今回も失業率の上昇は止まらないと予想している。ガンドラック氏は次のように述べている。

労働市場は更に憂慮すべき状態になる可能性がある。

パウエル議長の期待するソフトランディングは起こらないのだろうか。

他の著名投資家の意見も参考にしてもらいたい。