ポールソン氏: トランプ氏が負けてハリス氏の政策が実現すれば株価は暴落する

リーマンショックを予想したことで有名なPaulson & Coのジョン・ポールソン氏が、CNBCのインタビューでアメリカ大統領選挙後の株式市場について語っている。

2024年の株式市場

ポールソン氏は2008年のリーマンショックにおいて原因となったサブプライムローンを空売りして大儲けしたことで知られる投資家である。

そのポールソン氏は、今の金融市場をどう見ているだろうか。ポールソン氏は次のように述べている。

リーマンショック以来、経済はかなり良い状況だと言える。株価は大きく上がっている。債券市場も悪くない。深刻な危機は起きていない。今は投資するには良い期間だ。

株価は一時大きく下がりもしたが、その後持ち直して高値圏で推移している。米国株は次のように推移している。

アメリカ大統領選挙

しかしそれも11月のアメリカ大統領選挙次第で変わるかもしれない。カマラ・ハリス副大統領とドナルド・トランプ前大統領、どちらが勝つかまだ決まっていない。だからそれは金融市場にはまだ織り込まれていない。

ポールソン氏は次のように続けている。

だがそれは大統領選挙で誰が当選してどういう政策が採用されるかによる。

例えば、トランプ氏の公約は前政権時に行なった減税を維持するというものだ。それは状況を安定させる。法人税は21%のままだ。譲渡益への課税も今のままだ。

ポールソン氏はトランプ氏を支持しており、多額の寄付もしている。トランプ氏はポールソン氏から金融市場に関して多くの助言を得ているだろう。

だからポールソン氏はトランプ氏贔屓なのだが、ポールソン氏は2人の候補の税金に関する政策に着目している。民主党については次のように言っている。

バイデン氏とハリス氏は法人税を21%から28%に上げようとしている。更に、譲渡益への課税を20%から39%に上げようとしている。しかも含み益に対してまで25%の課税をしようとしている。

法人税と譲渡益税

優れたヘッジファンドマネージャーであるポールソン氏がこの2つの税金に着目するのには理由がある。法人税と譲渡益税は、両方とも資産価格に直接影響を与えるからである。

例えばトランプ氏は前政権時に法人減税を行なった。これまでの記事で説明しているが、法人税はGDPの規模からすれば大きくなく、経済全体に与える影響は少ない。

だが法人への減税は実質的には法人を保有する株主への減税となるため、株式市場には大きなプラスとなり、2016年以後に株価を持ち上げる要因となった。

一方で、民主党のハリス氏は法人税増税だけでなく譲渡益への増税と、更にはまだ売却されていない資産の含み益に対して課税するということを公約にしている。

トランプ氏の法人減税が株価を上げたのであれば、ハリス氏の法人増税は株価を下げるだろう。しかも含み益に対する課税まで行われれば、市場はどうなるのか。

ポールソン氏は次のように述べている。

これらの政策を行えば、株式市場は崩壊するだろう。疑問の余地はない。当然だ。

含み益への課税

含み益への課税が何故大事なのかと言えば、様々な理由がある。まず、含み益があるからと言ってその人に現金が入ってきているわけではないことだ。

例えば1億円で買った株が2000万円上がっていたとして、その含み益に25%の税金が課されれば500万の税金が発生するが、株式は持っているものの現金が500万円なければどうすれば良いか。その株式を一部売って現金を作るしかない。

また、これは美術品などに多いが、値上がりしてしまって売却すれば税金が発生するから売るに売れない資産は世の中に大量に存在している。そういう資産の含み益に税金が掛かってしまえば、もう売らない理由がなくなりその資産は売却されるだろう。

だから含み益への課税は資産の売りを必然的に引き出す。ポールソン氏は次のように述べている。

バイデン氏とハリス氏のチームが政権を取り、含み益への課税という公約を実行すれば、住宅も株式も美術品もすべてが投げ売りされるだろう。それは即座に景気後退を招くことになる。

だから仮にハリス氏が当選してもそんなことは出来ないだろうと考えている人も多い。議会も通さなければならないからだ。しかしハリス氏の含み益以外への増税については議会を通す必要がない。ポールソン氏は次のように続けている。

トランプ減税は放っておけば期限切れになり、税率は自動的に元の水準に戻ってしまう。それは苛酷だ。株価は下がり、経済成長に影響するだろう。

トランプ氏が当選した場合

では逆にトランプ氏が勝てば株価はどうなるのか。ポールソン氏は次のように答えている。

トランプ氏が当選すれば、市場にも経済にも大きくプラスだと考えている。

株価はこのまま上がり続けるだろう。インフレ率は下がるだろう。金利も下がるだろう。企業利益は増加するだろう。経済ももっと成長するだろう。力強い4年間になる。

トランプ氏でもハリス氏でもアメリカの財政問題を心配する識者は多いが、ポールソン氏はそうではないようだ。

そしてポールソン氏がそれを心配していないことには理由がある。彼自身がトランプ政権の財務長官になるのではないかと囁かれているからである。

ポールソン氏はその可能性について聞かれ、次のように答えている。

自分がトランプ氏の助けになれるならどんな方法でも助けになりたいと思っている。今一番重要なのは選挙の結果だ。だがそれが決まれば、わたしが政権内でどういう役割に就くかを話すことが出来るだろう。