NVIDIAの次に株価が高騰するAI銘柄はCoherentかLumentumか?

先日の記事では、株価が暴騰したNVIDIAを2023年から推奨し続けていたスタンレー・ドラッケンミラー氏が、NVIDIAから次のAI銘柄であるCoherentに乗り換えたことを報じた。

Coherentは確かに有望である。だがその前にもう1つ検討したい銘柄がある。今回はその銘柄について解説したい。

NVIDIAの次のAI銘柄

先日の記事で書いたように、ドラッケンミラー氏がNVIDIAから乗り換えたCoherentは、サーバ間の通信に使われる光ファイバーの光信号をデータに変換する光トランシーバーの製造の業界最大手である。

何故それがAIに関係するのか? AIは膨大なデータを処理するので、何万ものプロセッサー(サーバー)を並列させて演算を行なうことになる。そうなればサーバー間の通信の速度がAIの処理能力にとって重要であることは言うまでもない。

だからAIに対応したいデータセンターは、高速なデータ転送を可能にする光トランシーバーの注文を急激に増やしている。

NVIDIAはAIの演算を行なうプロセッサーそのものを製造していたが、AI銘柄はGPUのメーカーだけではないのである。

業界2位のLumentum

ということで、AI需要で高性能な光トランシーバーの需要が急増しており、ドラッケンミラー氏は世界シェア1位のCoherentを買っているのだが、では2位はどうなのか?

光トランシーバーの世界シェア2位はLumentumであり、こちらも米国市場に上場している。Coherentと同じく800Gまでの速度の光トランシーバーを製造している。

業績もCoherentと似たような状況である。データセンターが本格的にAIに対応し始めたのは最近のことなので、売上の上昇はまだ起きていないが、アナリスト予想では今後の売上上昇は凄まじいことになっている。

Coherentについては以前の記事から引用しよう。

アナリスト予想の平均によれば、1株当たり純利益は2025年6月期で3.05ドル、2026年6月期で4.27ドルになると予想されている。2025年から2026年で40%の利益成長ということになる。

株価収益率は2025年6月期で25倍、2026年6月期で18倍となる計算である。

Lumentumは2025年6月期が1.72ドル、2026年6月期が3.57ドルで、株価収益率は2025年6月期が30倍、2026年6月期が15倍になるというのがアナリスト予想である。

どちらが買いか?

爆発的な利益の上昇によって(株価が同じならば)株価収益率が自動的に下がってゆく見通しは、2023年のNVIDIAと同じである。2026年に高成長企業が10台の株価収益率になることが有り得ないと判断するならば、株価は上がらざるを得ない。

だがここで着目してもらいたいことがある。Coherentは3.05ドルから4.27ドルで利益の成長率は年率40%だが、Lumentumは1.72ドルから3.57ドルで108%の成長(つまり倍以上)と予想されている。

何故こうなるのか? 同じ部品を作っているのに、業界2位のLumentumの方がCoherentより受注を多く受けているのか?

この成長率の差を生んでいるのは、実は業績の差というよりも売上高構成である。

この2社はともに光トランシーバーだけでなく、産業用レーザーなどの他の製品も作っている。その点でも似ている2社なのだが、売上高のうち光トランシーバーなどネットワーク関連の割合がCoherentは49%だが、Lumentumは80%なのである。

つまり、Coherentのネットワーク機器の売上高が急成長したとしても、それは会社全体の売上の半分が急成長しているに過ぎない。だから例えばネットワーク関連の売上が20%増加したとしても、全体の売上は10%増えるに過ぎないのである。

結論

それでも年間の成長率が40%になるということは、Coherentのネットワーク部門はその倍ほどの成長をするという想定になっているということである。

だがLumentumの場合は会社全体の売上に占める光トランシーバーの割合がCoherentより大きいので、光トランシーバーの売上増加が会社全体の売上成長に繋がりやすい。それが108%という驚異的な急成長予想に繋がっているのである。

Lumentumの株価はまだまだ動いていない。ドラッケンミラー氏がCoherentに目をつけたのと同様、市場でも先ずは業界1位が注目される可能性が高いだろうが、売上高構成を見れば最終的な上昇幅はLumentumが上回るかもしれない。高い利益成長は高い株価収益率を正当化するからである。

だがどちらも素晴らしい投資機会である。2023年のNVIDIAのように。ドラッケンミラー氏は『新マーケットの魔術師』の中でのインタビューで次のように言っていた。

ソロス氏に教えられたのは、もしそのトレードに強い確信を持っているのであれば、すべてを賭けて勝負しなければならないということです。貪欲になる勇気が必要なのです。

それで躊躇いなくNVIDIAをCoherentに持ち替えている。Coherentは現在、ドラッケンミラー氏の米国株最大ポジションである。


新マーケットの魔術師