Rosenberg Researchのデイビッド・ローゼンバーグ氏がYahoo Financeのインタビューで現在の株式市場の下落の原因と今後の推移予想を語っているので紹介したい。
世界的な株価下落
ここ1週間で株式市場は大きく下落し、その後ある程度反発した。日経平均についてはこれまで何度も取り上げているので、今回は米国株のチャートを掲載しよう。
米国株は日本株と同じように一度反発したが、昨日の取引では再び下落となっている。
株価の反発は偽物だったのか? ローゼンバーグ氏は下落後の反発について次のように語っている。
過去数日の株価反発のほとんどは単にアルゴリズム投資と、巨大な下落に対する巨大な反動の結果に過ぎない。
市場はパニックになっている。ここ数日だけでなくここ1週間、ボラティリティは日足で見ても時間足で見ても天井を突き抜けた。
株価の上下幅の大きさを示すボラティリティ指数はこの下落で急上昇した。ボラティリティ指数のチャートは次のようになっている。
ボラティリティ指数は市場がパニックに陥った時に上がる。コロナショックに並ぶようなパニックだったことが分かる。
ローゼンバーグ氏はこう続ける。
わたしの見方では、記録的な下落があった後にボラティリティ指数が60まで上がるような状況では、短期的な売られすぎから機械的な反発があるのは当たり前だ。
ローゼンバーグ氏は株価反発を単に機械的なものだと考えているようだ。そして彼は次のように続ける。
この機械的な反発に乗ることは賢明な行動ではない。相場はこの下落がある前から不安定になり始めていた。
大きく反発したとはいえ、ダウ平均はまだ高値から2,000ドル下がっている。S&P 500はまだ高値から7%ほど下落したままだ。
だから大きな下落があって、そこから機械的な反発が起こってはいるが、この下落相場は間違いなくまだ森を抜けていない。
株価下落の本当の理由
ローゼンバーグ氏は株価下落は本物で、その後の反発は単に短期的なものだと見ているようだ。
では株価下落の原因とは何なのか。ローゼンバーグ氏は筆者が以下の記事で論じたように、実体経済の減速が株価下落の原因だと考えているようである。
彼は様々なアメリカの経済指標に言及して次のように言っている。
住宅市場はかなり大きく減速し始めている。
住宅市場はもちろん重要な先行指標だ。
また、工場における雇用の数は横ばいになり、労働時間数は大きく減少している。
だから産業における生産は落ち込みつつあるようだ。だがいつでも何処でも一番重要なのは労働市場だ。
アメリカでは失業率が急上昇している。今のアメリカの失業率の水準については、先月の初めに筆者が次のように言っておいたことを思い出したい。
100年近くにわたって検証してみれば、失業率の上昇が前年との差で0.5%以上に達した場合、景気後退を逃れられたケースは戦後1度もない。
そして以下の記事で検証したように、実体経済が景気後退に陥る時にはその半年ほど前に株価は下落を始めるのである。
景気後退と株価下落
だから下落が始まる前から必要な情報はすべてここに書いておいた。ローゼンバーグ氏は次のように纏めている。
労働市場にはヒビが入り始めている。それが金曜日に株式市場が下落し、債券市場が上昇した理由だ。
そして株価がここからどうなるかということについては、ローゼンバーグ氏はシンプルに次のように言っている。
だが労働市場にヒビが入ったという金曜日の話はなくなっていない。
経済を支える財政刺激はなく、コロナ禍の給付金で積み上がった家計の貯蓄が底を尽きている。
多くの人が実体経済に何の心配もしていなかった今年の前半、ローゼンバーグ氏はまさにソフトランディングは幻想で、景気後退が来れば株価は下落するということを強く主張していた。
この記事でローゼンバーグ氏は30%から40%程度の株価下落を予想していた。果たしてその予想は当たるだろうか。楽しみに結果を待ちたい。