日経平均の急落が話題になっている。それにつられて米国株など他の国の株価も下落した。株式市場はこれからどうなるのか? 11月のアメリカ大統領選挙も絡めて動向を予想したい。
日本株急落
8月5日、日本株は大きく下落した。日経平均のチャートは次のようになっている。
株価はこれからどうなるのか。動向を予想するためには、まずそもそも下落の原因は何だったのかを特定する必要がある。
株価下落の理由
株価下落の原因は何だったのか。既に記事を書いている通り、株価急落の原因は世間で言われているような植田日銀総裁の利上げではない。
株価下落の原因は実体経済にある。何も考えずに株式をNISAに詰め込んでいた投資家は知らないだろうが、日本の実質経済成長率は今マイナス成長であり、成長率は-0.81%である。
また、これも実体経済になど興味がない投資家は知らなかっただろうが、以下の記事で検証した通り、景気後退が来れば株価は必ず下がる。だから投資家は実体経済をおろそかにしてはならない。実体経済を無視して株価が上がることはない。
状況としてはアメリカも同じである。失業率の上昇が景気後退が近いことを示唆しており、それが株価を下落させている。
以下の記事は先月の記事だが、次のように書いておいたことを思い出したい。
何度も書いたが、景気後退のおよそ半年前が株価の天井となる。失業率が景気後退が不可避の水準まで上がってきていることを考えれば、その時期はそろそろだということである。
これまで書いてきた失業率に関する警告や景気後退前後の株価の動きの検証などは意味があってやっていることなので、重く受け取ってほしいということである。
いつものことだが、下落後にここの記事を重く受け取っても無駄である。もう落ちてしまってからではどうにもならないからである。
これからどうなるか
ということで、そもそも7月の記事で予想していた通り、株価下落の原因は日米両方の景気が減速していることである。
さて、この状況は2016年のドナルド・トランプ氏の大統領選挙の勝利直前の状況に似ている。
2016年、筆者や著名ファンドマネージャーらは景気後退を予想していた。アメリカの経済成長はプラスではあったが急減速しており、これも今の状況と同じだが、日本の経済成長率は前期比年率で見ればマイナス成長となっていた。
株式市場は景気後退に備えて天井を形成しつつあった。2015年の後半には株価は失速を開始していた。
だが事前の世論調査などを覆してトランプ氏が大統領に当選し、法人減税やインフラ投資などの景気刺激を発表すると、株価はそれまでの失速から急上昇へと転じていった。
以下が当時の米国株の推移である。
落ちそうで落ちなかった、そして最後にはトランプ相場の株高へと繋がっていった様子が見て取れる。
実際、この時アメリカ経済はトランプ氏の経済政策によって景気後退を回避しているのである。だからこれが景気後退になりかかった時に景気刺激があった場合の株価の推移である。
ちなみに日本株の動きは米国株よりも酷い。現在もそうだが、日本経済は既にマイナス成長になっていたからである。日経平均のチャートは次のようになっている。
日本株は2015年から2016年にかけて20%以上下落しているのである。現在も、実体経済がより悪化している日本の株価の方が下落が大きいという状況が再現されている。
結論
だが2016年、それでも日本株は米国株の復活につられて下落が止まった。日本経済もトランプ相場による世界的な経済成長によってそこから盛り返した。実体経済の回復が実際に起こったので、株価も持ち直したのである。
2024年、投資家にとっての問題は、2016年と同じことが起きるかどうかである。もし同じことが起きれば、日本株は救われる可能性がある。
しかしそのためにはいくつか条件がある。まず第一に11月にトランプ氏が勝利すること。もしアメリカ経済がこのまま減速した形でトランプ氏にバトンが渡れば、トランプ氏は間違いなく景気対策を行なうだろう。民主党のハリス氏ならばどうなるかは微妙である。
だが株価回復の条件はそれだけではない。2016年と2024年では状況が違う。2016年にはインフレは問題となっていなかったが、今の相場では景気対策をやり過ぎればインフレがぶり返すことが心配されている。
インフレが再燃すれば金利が高騰し、株価にとってマイナスになるシナリオが著名投資家によって予想されている。
だから株価回復の条件はこうである。トランプ氏が11月に大統領選挙で勝利し、インフレを悪化させない絶妙なさじ加減でアメリカの景気を回復させ、しかもそれが日本経済にも波及する。
針に糸を通すようなコントロールが求められる。しかし投資家にとって一番問題なのは、この条件があと3ヶ月は確定することがないということではないか。
それまで株式市場は命綱をつかもうとしながら、その命綱が半分透明だという状況を続けることになる。
ちなみにドル円の動向予想に関しては以下の記事を参考にしてもらいたい。