引き続き、Ex Uno Plures創業者のゾルタン・ポジャール氏の2023年11月のBudapest Eurasia Forumでのインタビューである。
世界的なドル離れ
前回の記事でポジャール氏は、世界的なドル離れがドルの下落ではなく米国債の買い手不足を引き起こし、米国債暴落に繋がる可能性を指摘していた。
BRICS諸国や中東諸国が貿易の決済にドルを使うこれまでの伝統から離脱しようとしていることで、ドルを通貨とするアメリカの側にはそういう問題が起きている。
では中国やインドなどドルから離脱する側では何が起きているのか。
人民元は基軸通貨ドルに成り代わるのか
金融業界でよく言われるのは、ドルに代わって基軸通貨になるのは何かということである。
そしてそうした議論で必ず持ち出されるのが中国の通貨である人民元である。
だがポジャール氏は次のように言っている。
人々は中国が人民元を新たな基軸通貨にするつもりなのかという問題に飛びつきがちだ。
しかしポジャール氏によれば、まずはもっと現実に根ざした観点から中国の目線でドルと人民元について考えてみることが必要だという。
中国はどう考えているか
ポジャール氏は次のように説明している。
中国にとって、一番最初に達成すべき最重要の課題は金融システムにおける主権を獲得することだ。
中国ほど大きく、産業におけるプレゼンスもある国ならば、これまでドルで決済されてきた資源の輸入のためにドルの準備金を積み上げることを強いられる状況にはなりたくないと当然思うだろう。
中国やインドや中東諸国がドルを避ける目的はあくまでまず自衛だということである。
特に、今年11月のアメリカ大統領選挙には中国の保有する米国債を意図的にデフォルトさせるというアイデアを持ったドナルド・トランプ氏が控えているのだから、中国はなおさら米国債を持ちたくないはずだ。
ポジャール氏はこう続ける。
だから中国などの国にとって最初の目標は、すべての重要な輸入の支払いを自分の通貨で出来るようになることだ。
ひとたびそれが達成されると、中央銀行のバランスシートの運用方法が変わってくる。重要な輸入の支払いのために外貨準備を保険として積み上げておく必要性がなくなれば、これまでほど外貨準備を保有する必要がなくなる。
自分の通貨で自分の買い物を支払えるようになり、外貨準備を積み上げなくても良くなれば、それは今のアメリカに近い状態だ。
結論
世界的なドル離れはもはや単なる事実である。だが人民元がドルに代わって基軸通貨になるとかならないとかいう話の前に、インドや中国や中東諸国はまずポジャール氏が言うような通貨における独立を手にするだろう。
それで米ドルは基軸通貨ではなくなる。他の通貨と同じ、通貨の1つに過ぎなくなる。そこから先は、本当に国力の勝負だろう。あるいはゴールドが天下を取るのだろうか。