引き続き、フォン・グライアーツ氏によるジム・ロジャーズ氏のインタビューである。今回はゴールドを他のコモディティと比較している部分を紹介したい。
価値がなくなる通貨の代わり
フォン・グライアーツ氏はまず歴史上、あらゆる通貨は長期的に価値を失ってきたという歴史的事実について語っていた。
それは世界の基軸通貨であるドルも同じである。インフレを考慮すれば過去数十年で8割方価値が減少している。
そこで投資家が通貨の長期的減価から逃れるためにフォン・グライアーツ氏はゴールドやシルバーを推奨していた。
一方で、『商品の時代』でコモディティ投資についての解説も行なっているジム・ロジャーズ氏は、ゴールドやシルバーも保有しているが他のコモディティも投資対象である。
しかしフォン・グライアーツ氏の推しはあくまでも貴金属らしい。ロジャーズ氏が例えば原油も長期的に価格が上がってきたことを指摘すると、フォン・グライアーツ氏は次のように言っている。
原油もこれまで上がってきた銘柄だ。ただ押し入れに仕舞っておけないのが問題だ。
クローゼットがベトベトになるだろう。ロジャーズ氏も悪乗りして次のように言っている。
ウランを仕舞っておけると良いのだが危ない。
ちなみにだが、原油を買って自分で仕舞っておいた投資家は実は存在する。以下の記事である。
原油とウラン
原油は確かに価格が長期的に上昇してきた。1980年のオイルショックのピークには原油価格は39.5ドルまで上がったが、今では原油価格はそれを大幅に超えて推移している。
原油価格はドル建てなので、それは同時にドルの価値が長期的に下がっていることも示唆している。
だが通貨の代わりという点ではフォン・グライアーツ氏の言う「押し入れに仕舞っておける」ことが重要だろう。貯金の代わりになるためには蓄えておけることが必要である。
だからこそ1970年代の物価高騰時代には原油や農作物などの他のコモディティ銘柄を差し置いて、金価格と銀価格が25倍以上に高騰したのだと言える。
だからこれからインフレ問題が再燃するのであれば、やはり投資すべきは貴金属なのだろう。
ウラン投資のポテンシャル
また、ロジャーズ氏がウランに言及したことにも注目したい。数あるコモディティ銘柄からわざわざウランに言及したのは、単に冗談のためではなく投資対象として意味があるからだろう。
ウランは原子力発電に使われる資源であり、原子力発電はいわゆるグリーンな人々のおかげで脚光を浴びている。
SDGsがどうとか言う人々は化石燃料を死んでも使いたくないので、初めのうちは化石燃料を使うくらいならば風呂に入らないと言っていたが、風力や太陽光だけでは世界のエネルギーはどうにもならないということに気付き始めた。
だから原子力に問題がないわけではないが少なくとも化石燃料ではない原子力発電がそうした人々に妥協案として受け入れられつつあるのである。ただし、脱原発をやってしまったドイツ人だけは風呂に入らない方を選ぶらしい。
また、中国人はろうそくを灯すという風流な選択肢を好んでいる。
それはもちろん冗談だが、グリーンな人々は冗談ではないらしい。彼らにとっての妥協策として原子力発電が脚光を浴びつつある結果、東日本大震災後に長期低迷していたウラン価格は爆発的に上昇している。
ウランは最近の大幅上昇前にここで推奨した銘柄である。NVIDIAとともに筆者の最近の大当たり銘柄である。
結論
ということで、コモディティ市場には様々な選択肢がある。1970年代の例を見ても、インフレを回避するならやはり貴金属である。
ただ、ウランはNVIDIA同様、筆者が短期的な値動きを無視して長期的に保有している銘柄の1つである。
ウランは、貴金属もその点では同じだが、景気後退が来れば大きく下がるだろう。筆者はプラチナを買っているが、景気後退に際してはプラチナはシルバーよりも弱い。
だがそれでもウラン、プラチナ、NVIDIAは、長期保有分に関しては景気後退が来ても持ち続けるだろう。景気後退には別のトレードで対処する必要がある。そしてそれはもうすぐ来るだろう。
商品の時代