世界最高の債券投資家であるジェフリー・ガンドラック氏がデイビッド・ローゼンバーグ氏によるインタビューでアメリカ政府が借金を返せなくなる可能性について語っている。
国債の利払い問題
今アメリカで著名投資家たちが気にしているのは、金利が5%まで上がった影響でこれまで金利がほとんど付いていなかった大量の国債に利払いが発生しており、米国政府の利払い費用が急激に増加していることである。
米国政府の利払い費用(GDP比)は次のように推移している。
このことについてガンドラック氏は次のようにコメントしている。
スタンレー・ドラッケンミラー氏が国債の利払いについて警告しているニュースが流れてきた。だが彼はCBO(議会予算局)のデータを使い、2040年までに国債の利払い費用が税収の30%を占めることになってしまうと言っていた。
だがCBOの想定は過度に楽観的なのでその数字はまったく正確ではない。
ガンドラック氏が珍しくもドラッケンミラー氏のコメントにコメントしている。ドラッケンミラー氏もアメリカの財政問題を憂慮している著名投資家の1人である。
だがガンドラック氏は、CBOの推計をそのまま使ったドラッケンミラー氏の数字は正しくないと言う。CBOは景気後退が起こらないと仮定するなど無理な想定をいくつか使って数字を出しているからである。
ガンドラック氏は、実際にはもうあと何年かでアメリカの財政問題は現実のものとなると予想している。
財政問題の解決方法
アメリカ政府が国債の利払いに圧倒され、年金などの支払いが出来なくなるとき、一体アメリカでは何が起きるのか。
ガンドラック氏は次のように述べている。
米国政府が国債を債務再編せざるを得なくなるのではないかと心配している。
債務再編とは借金を一部免除するなど、借金が支払えなくなったために借金の内容を変更することである。
国債を持っている人は国債は安全資産だと思っているだろう。だがガンドラック氏は次のように続ける。
国債の再編は不可能だ、契約上違法だと人々は言うかもしれない。だが2007年、2008年、2009年のモーゲージ債のことを覚えていないのか?
これらのモーゲージ債を再編することは違法だった。何兆ドルものモーゲージ債には、再編はできないとはっきり書かれていた。だがそれでも再編された。
モーゲージ債とは不動産ローンを証券化したもので、不動産バブルの崩壊によって起こったリーマンショックにおいて渦中の銘柄となった債券である。
ガンドラック氏によればそれを再編することは違法だった。だが結局再編された。
他にも例はあるとガンドラック氏は言う。彼は次のように続ける。
1913年の連邦準備法にはFed(連邦準備制度)が社債を買い入れることは違法だと書いてある。だが2020年にFedは社債を買い入れ始めた。
奨学金ローンを免除することは違法で憲法違反だ。だが昨日、たった1日で77億ドルの奨学金ローンが免除された。
だから法律上決まっていると思われているものが起こらないとは限らない。それが事実だ。もう何年もそれは当たり前のように起き続けている。
法の支配は重要だ、自分にとって都合が悪くなるまでは。表現の自由は重要だ、自分にとって都合が悪くなるまでは。政治家が脱税しても処罰されないように、それが法治国家の法律や言論に対する普通のスタンスである。
国債の債務再編
だから国債の再編も十分有り得るとガンドラック氏は言いたいのだろう。彼は次のように続けている。
これを予言するわけではないが、例えば財務省がこう言ったらどうなる?
アメリカは利払いに苦しんでいる。だから1%以上の利回りを持つ国債の金利は1%とする。金利が1%未満の国債はそのままとする。
しかしそうなれば窮地に陥るのは国債の保有者である。金利を減らされれば単に利払いが減るだけでなく、保有している国債の価値が大きく下落してしまう。
安全だと思って持っていた国債の価格が急に大幅に下落すればどうなるか。しかも司会者のローゼンバーグ氏は国債の大口保有者は年金ではないかと指摘する。
ガンドラック氏はこう答えている。
分かっている。そうなれば悲惨だ。完全に悲惨だ。だが他に方法がない時にはそういうことが起こる。
結論
金利上昇によって莫大な政務債務に利払いが付いたことによって、アメリカの財政は差し迫った問題となっている。
そして日本もその状況に遠くはないのかもしれない。アメリカでは金利は5%だが、日本ではGDP比で政府債務がアメリカの2倍近くあるので、金利が2.5%まで上がるだけでアメリカと同じ状況になってしまう。
政府の借金は問題ない。政治家のその言葉を人々が無批判に信じた結果が人々に襲いかかろうとしている。レイ・ダリオ氏によれば、結果として人々はゴールドに資金を逃しているという。