ガンドラック氏: アメリカ大統領選はトランプ氏が勝つ

さて、ここのところ連続でDoubleLine Capitalのジェフリー・ガンドラック氏の自社配信動画でのインタビューを紹介してきたが、このシリーズはこれで最後である。

今回はFox Businessでのインタビューの内容も追加しながら、今年11月のアメリカ大統領選挙の話題を紹介していきたい。

大統領選挙と財政政策

今年の大統領選挙はどうなるのか。アメリカの政治に関してガンドラック氏が一番懸念しているのは国債の利払いの問題である。

利上げによってこれまでゼロ金利だった国債に5%もの金利が付き始めており、突然付き始めた巨額の利払いが米国政府の財政を急激に圧迫している。

この状況を引き起こしたのがコロナ後の莫大な財政支出である。では今年の大統領選でトランプ氏が帰ってこればその問題は解決するのか? ガンドラック氏は次のように述べている。

トランプ氏がホワイトハウスに戻ってくることで財政支出が減ると言えるだけの過去を彼が持っているかはわたしには分からない。

もちろん皮肉である。インフレを引き起こしたコロナ後の財政支出はトランプ政権とバイデン政権の両方によって行われたからである。

しかし一方でガンドラック氏はこうも言っている。

ただ、トランプ氏なら2022年にバイデン政権が行なった紙幣印刷政策はやらなかったかもしれない。2021年と2022年の政策がすべてを破壊した。

ガンドラック氏が何を言っているのかは、アメリカの可処分所得とインフレ率のチャートを並べればすぐに分かる。

可処分所得が急激に増えている箇所は現金給付である。

インフレ率の推移と組み合わせて見ると、2020年の現金給付はデフレを止めた。しかし2021年の現金給付はインフレ率を1%台から9%まで押し上げた。それらは完全に不要だったのである。

日和見主義なバイデン政権

だからアメリカ経済の問題はどちらの候補も解決できそうにない。では大統領選はどのようにして決まるのか。ガンドラック氏は次のように述べている。

少なくともトランプ氏は自分の政策を持っている。より少ない規制、そして間違いなくより多くのエネルギー生産だ。

しかし今のバイデン政権の問題は政策がはっきりしないことだ。支持率が45%か55%かによって意見が変わり政策が変わる。

人々もそれに気付き始めていると思う。エネルギー政策は右往左往している。中東政策も右往左往している。

バイデン大統領は脱炭素政策とかSDGsとか言って原油採掘企業に対する融資に制限を掛け、それらの企業を資金難に陥らせることによって原油の供給を強制的に減らした。

供給の減少によってエネルギー価格が高騰すると、バイデン氏は産油国にもっと原油を生産しろと言い始めた。

一体どっちなのだ? バイデン氏は原油を減らしたいのか、増やしたいのか? ガンドラック氏の言っていることはそういうことである。

バイデン政権の中東政策

ガンドラック氏によれば、バイデン政権は中東政策でも同じことをやっているという。ガンドラック氏は次のように指摘している。

イスラエルとハマスに関するバイデン政権の政策はこんな感じだ。この比喩をよく使うのだが、バイデン政権は片足をカヌーに、もう片足を岸辺に置いている。カヌーは岸から離れようとしている。

10月7日のハマスの攻撃は非難する、パレスチナ人に同情しない人も非難する、そしてイスラエルがハマスを撲滅することを支持するが、ラファには侵攻するなと言う。

だがこの2つは矛盾している。両立できない2つを両立しようとしている。それらを両方取ることはできない。

ガンドラック氏が言っているのはパレスチナにおいてどちらが悪いという話ではない。

しかしイスラエルはラファに侵攻しなければハマスは撲滅できない。だからイスラエルのハマス撲滅を支持しながらラファ侵攻を支持しないのはそれ自体が矛盾なのである。

だがバイデン氏は両方の人々に良い顔をしようとして矛盾に足を踏み入れている。

ガンドラック氏はこう言っている。

片足をカヌーに、もう片足を岸辺に起き続けると最終的には水に浸かるだろう。

現政権の大統領と副大統領の支持率が40%以下なのは、政策が揺れ動きすぎるからだろう。彼らには政策がない。日和見主義があるだけだ。

すべての政治家はある程度そうだが、彼らの場合はやり過ぎだ。

大統領選はどちらが勝つか

今年の大統領選挙はどちらが勝つのか。ガンドラック氏は次のように主張している。

今の状況は1968年に非常に似ている。ジョンソン大統領が3月に大統領選挙への不出馬を決めた。民主党の予備選でユージーン・マッカーシー氏に負けたからだ。いや、負けなかったのだと思うが予想外の僅差だったので人々はショックを受けた。

何故そうなったのかと言えば、ベトナム戦争が問題となっていたからだ。

ジョンソン大統領はケネディ大統領暗殺によって大統領に昇格し、ベトナム戦争の戦火を拡大させアメリカ兵に大量の死者を出した政治家である。

アメリカでは戦争はいつも政治家によって強行される。一般のアメリカ人は最初はメディアに乗せられて支持するかもしれないが、時間経過とともに冷静になる。

今も同じである。ウクライナでもパレスチナでもそうなっている。

ガンドラック氏は次のように言う。

そして今また戦争が問題となっている。

だからトランプ氏が勝つだろうと予想する。こうした状況では色々なことが起こり得るが、わたしの予想はトランプ氏の勝利だ。